那由子
第1章
気づいた事がひとつある。私はあいつの事、たった今好きになったのだ。
「他に好きな子いるからお前とは別れたい」
そう、言われた五秒後に。
家に帰って家族と会話するのも億劫だったから、教室の窓際の席でもて余した時間が過ぎるのを待つ。そして、無駄に揺らめくカーテンを目で追っていた。
何でこのカーテンはクリーム色なんだろう。何で学校は左側が窓で右側が廊下なんだろう。そんなどうでもいい疑問をこしらえて、余計な事を考えないようにする。
そのせいで、誰かが教室に入ってきた足音にも、自分の方にそっと歩いてくる事にも全く気がつかず
「…真帆?」
唐突にかけられた声に驚き、私は文字通り椅子から数センチ飛び上がった。その様子を…
もくじ (1章)
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