またひとつ手の甲に落ちた雪は、じゅっと音を立てて燃え溶けた
第1章
『やっぱ北海道は寒い、一枚多く着てきてよかった。これから接待だからスマホつながらないけど大丈夫?』
『こっちは大丈夫。あまり飲み過ぎないようにね』
『うん、わかった』
ぶるっと震える手でスマホの電源ボタンを指ではじいた。
ブラックアウトした画面に、白い雪がはたと落ちた。
いつもはそのまま鞄に入れる手を、そっと、ぎゅっと、握りしめた。
(夜の街は「こんなもの」だったのだろうか?)
今日はまた一段と夜が早いと感じるほどに、目の前の景色に帳がおりる。
3年前の私だったら、違った感情を持っていたのだろう。
百貨店から漏れ出る活気でさえも肌障りに感じて、首元のマフラーを少し持ち上げた。
***
彼と…
もくじ (1章)
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作成日:2022年1月28日