朝顔のかんざし
第1章
遠くで力強く鳴り響く太鼓や軽快なリズムを刻む笛のお囃子が聞こえる
きっとあそこにいる人々は笑顔に溢れ、たくさんの屋台を覗きながらキラキラした目をしているのだろう
僕はそんな賑わいの中心に向かって、今、全速力で走っていた
今日は付き合い始めて5年目の恋人と毎年一緒に行っている夏祭りの日
夕日が翳りつつあるこの時間、鉢に植えてある朝顔は花を咲かすことなく、明日の朝のためにおやすみ中だ
事故で亡くなった両親から受け継いだ喫茶店をいつもよりだいぶ早く閉め、待ち合わせの場所へ向かおうという時だった
「恋人さん」と名前がついたトークルームに新着メッセージ
「…は?」
僕は思わずメッセージを読みなおす
『仕事中ごめん。…
もくじ (1章)
修正履歴作品情報
たくさんの「大切」を大切にする方法。
そんな方法僕は知らない。
だから僕は、今、一番大切だって思う「大切」を選ぶ。
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