てのひら
第1章
「16時48分。……危篤です」
茜色に染まった空から降り注ぐ光が、病床の老人を照らし出している。
100年という永い時を生きた老人が、家族や親族に囲まれて今まさにその生を終えようとしていた。
誇るべき大往生だ。
しかし彼は、その時を前にしてひどく落胆していた。
「ねえママ、じいじもうすぐ死ぬの? お葬式の時退屈だからゲームしてていい?」
「こらっ、そんなこと言わないの! じいじは大金持ちだから、きっと精進落としではとんでもないご馳走が出てくるわよ。ご馳走が食べられると思って、我慢なさい!」
「本当!? 早くお葬式始まらないかなー!」
「ねえ、お父さんが住んでいた家は私が頂くわ」
「何!? じゃあ俺はお父さんが趣味…
もくじ (1章)
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