とある契約のお話
第1章
「先日、父が亡くなり、母の介護をしなくてはならなくなりまして…」
目の前にいる人事部の人間は、亡くなったのは知っているが、そんなことは自分には関係ないし、会社の業績、いや自分の評価を落とさんでくれよ、とこちらに一瞥をくれてから「で?」と言った。
「ですから、出社時間を調整していただけないものかと…」こちらも食い下がってみるものの、これ以上、その話に興味はないという彼の顔つきに、私の語尾はだんだんと小さくなっていく。
「給与、下がってもいいんだね」と、ばっさり契約の見直しを言い渡された。そんなことを言われると思ってもみなかった。うちの会社は、従業員の働き方に理解を示してくれている方だと思っていた。け…
もくじ (1章)
作品情報
作品紹介文はありません。
物語へのリアクション
お気に入り
0読書時間
8分コメント
12リアクション
14