故郷はいかに
第1章 春のにほひ
寒さが溶け、冬服もタンスへしまおう。と感じさせる天候が続く。
確か去年の今頃は、私の故郷の桜は満開だった。
故郷はド田舎でも、楽しい街でもない。最低限の人間が楽しめるような施設が揃っているどこにでもある普通の街だ。
しかし、そんな町が私は好きだった。
東京や横浜なんぞの大都会に比べたら圧倒的につまらぬ街だろう。
でも、その空気で育ちその方言で育った私は日本人というアイデンティティの前にその町の住人であるという意識が強いことを今の町は鮮烈に教えてくれる。
社会人になってから新しい馴染めぬ新天地へと移り住み、1年が経とうとしている。
馴染めぬ、好きになれぬ街の中で私はひたすら春の匂ひを呼吸と共に体に取り入れ、…
もくじ (1章)
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