春待つふたり
第1章
寒の戻り。
「暖かくなってきたから、手袋もマフラーも週末に手洗いして片付けてしまった」と君は首をすくめて両手を擦り合わせる。
君の前髪のすきまで困ったように下がる眉。
僕が君の手を取ると、君は眉とすくめた首を上げて僕に微笑んだ。
僕を見上げたはずの君の視線は僕を通り越して「あ」と小さく君の声が漏れる。
ほころびはじめた桜の木の下で、僕は握った手の親指で君の手を撫でる。
もくじ (1章)
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