スチャラカ夏祭り(How to はじめまして)
第1章
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ノイズはそれほど遠くないところまで迫ってきていた。
その音を聞くと、僕はいつも、自分が縮んでゆくのを感じる。小人になった僕は大きな僕の耳の中にいて、追っ手がやってきたことを内耳にいる仲間たちに知らせるため駆け出すのだ。
内側に向かって、外耳道をひたすら走る。
かさついた細かい耳垢や軟骨の凹凸に足をとられて何度も転びそうになるが、決して立ち止まってはいけない。振り返ってもいけない。走るんだ、何も考えずに!
でも、どこまで?
たとえば耳掃除をする時に耳かき棒をどこまでもさしていったら、その先っぽはどこから出てくるのか、僕は知らない。
奥深くに行くにつれて、闇と熱のあまりだんだん上下左右もわからなくなってく…
もくじ (1章)
作品情報
17000字くらいの短編です。
あらすじ
同じ塾のヤクミに複雑な感情を抱いている中学三年生、竹本。塾をサボって夏祭りに行ったヤクミに嫌みをいってやろうと会場の商店街に向かうが、ヤクミは行く先々で竹本を別の誰かと勘違いして話しかけてくる。
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