青の群れ
第1章 青の群れ
「またぐんじょうのクレヨンを買うの?」
ママは呆れたような顔と声で告げる。
「うん」
夕方から夜に染まり切る前の、一番星の後ろに広がる空の色。
旅行で乗った電車の窓から眺めた晴れた空の下に広がる海の色。
雨上がりの道端で濡れながら咲いていた露草の花の色。
描きたい絵にいつも使う色がこれだ。
黒では完全に夜の空になってしまう。
青では海や濡れた花の深みが足りない。
紫や灰色とも違う。
「ぐんじょうじゃないとだめ」
陳列棚のフックには「ぐんじょう」のクレヨンが「あお」や「みずいろ」よりもたくさん下がっている。
幼稚園でもこの二つの色と比べると「ぐんじょう」を好きで使う子は少ないからきっと買う人も少ないのだ。
「このぐん…
もくじ (8章)
作品情報
夕暮れから夜に染まる、その手前の色。
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