夏の宵、太陽より熱い、君の手を。
第1章
「お祭り、楽しかったね」
君は淡い水色にアサガオの花が咲いた浴衣に身を包み、歩きながら僕の顔を覗き込んだ。
道路を彩る提灯が揺れる。縁日のおじさんたちは汗をふき、てきぱきと店を片付けている。
僕は君とお祭りに来ることができただけで感激だ。正直な所、焼きそばの味も花火の色も覚えていない。ずっと風に揺れる君の前髪と、浴衣のアサガオを見ていた。もちろんそれは口にしない。まだ付き合って2週間しか経っていないのにそんなことをいうのは不躾だ。気持ちの悪い男だとは思われたくない。
僕達はバス停に向かって歩いている。バスに乗ればそれぞれの家はそう遠くない。時折風が吹き、祭りのあとの匂いを運んでくる。背中は着慣れない…
もくじ (1章)
作品情報
■君は暑さのせいだと言うけれど、僕はそれだけじゃあないと思う。
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