投石機
第1章
雨は強くなるばかりであった。
護民長官ペトロニウスは、展望台から城壁の外を眺めていた。
城市(まち)の外はすべて《海》になっていた。気に入らない景色だった。
かつてこの国を覆い尽くしていた緑の農地も、狩場も牧草地もなくなってしまった。
彼がまだ若く新米の護 民官だったころから、毎日毎日見続けてきた牧歌的な風景はもうどこにもなかった。
世界は《海》によって覆われていた。
ペトロニウスは天に唾を吐きかけたい衝動に駆られたが、すぐに思い直した。馬鹿馬鹿しいことだ。天になど唾を浴びせかける価値もない。昔から『天に唾を吐きかけると、自分の顔に跳ね返ってくる』という。だが、 それを信じているやつはよっぽどのろまか、道理…
もくじ (1章)
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