とことこ
第1章
「夏休みなのに制服なんだな」
足立君が私の家を訪ねて来るのはそれがはじめてのことだった。
裏の神社から蝉の鳴き声がする。
「あ、そっか……俺の……」
「着替えてくるから、縁側で待っててもらってもいい?」
お気に入りのワンピースに着替えてお盆に冷たい麦茶のグラスをふたつ乗せて縁側に向かうと、縁側に座る足立君はゆっくりとこちらに振り向いて笑った。
眼鏡の中で一重の目をずっと細くさせて笑う、足立君のその笑顔がやっぱりとてもすきだと思った。
◇
私がこの力を得たのは小二の秋だった。
祖母を荼毘に付して帰宅すると、玄関に空へかえったはずの祖母が立っていた。
「麦ちゃん、ああやっぱり麦ちゃんなのね。この力を受け継ぐのは。ば…
もくじ (1章)
作品情報
作品紹介文はありません。
物語へのリアクション
お気に入り
3読書時間
5分コメント
12リアクション
17