綿あめの溶けたあとに
第1章 ウケる
家の前の道路のコンクリートがきちんと舗装されている事ですら、俺としては驚きだ。
生まれてから17年間を過ごしてきた山の中の大自然に囲まれた小さな田舎町からこの大きな都市に引っ越して今日はまだ2日目。
今までは高校に通うために1時間かけて駅まで自転車を漕ぎ、そこから電車で更に45分ほど揺られてやっとファミリーレストランが1軒だけあるような街中に出ていたが、今では徒歩5分の位置にコンビニもファミリーレストランもあり、徒歩10分の位置に駅だってある。
「空気あっつ……」
引越し作業も一段落し、折角だから電車で二駅の繁華街まで足を伸ばしたら?という母の提案に乗って、財布とスマホだけ持ち駅へと向かう。
地図ア…
もくじ (6章)
修正履歴作品情報
ふわふわの綿あめのようなむらさきいろは、今にも消え入りそうに揺れているのに、それに触れる勇気は俺にはない。
自然豊かな田舎から都会の高校に引っ越してきた清水健斗(シミズケント)が痴漢から助けたのは、ふわふわのパステルパープルのカールヘアに、華奢な身体をぶかぶかな水色のパーカーで包んだともすれば美少女にも見える、所謂ジェンダーレス男子、篁絢人(タカムラケント)だった。
「お前、男!?」
「やっぱり変なの、ふふ」
どこか掴みどころのない絢人は「俺の彼氏になってよ」と笑いながら告げる。
可憐で軽薄なその言葉は、健斗の心を妙にざわつかせた。
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