銭湯とキメラと太宰治
第1章
小説をこの世に出すというのは、テレビやラジオが普及していなかった時代では、数少ない娯楽であり、自己表現の場であり、注目される場だったのだと俺は思う。
おそらく、当時山ほどいたであろう『作家志望の書生』は、今で言うところの、YouTuberのようなものだったはずだ。
今までにない小説家という職業に、彼らは古い考えを持つ大人達から、十把一絡げに浮ついている輩という評価を浴びせられたかもしれない。
もしそうなら、そこも共通点だなと思う。
まあ、想像でしか無いけど。
俺は銭湯のチケットを買いながら、そんな事を考えていた。
何故そんな事を考えていたのかと言うと、この銭湯が大正時代から続く歴史ある銭湯で、かの文豪も…
もくじ (1章)
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いつもの銭湯で一瞬の闇に紛れて俺が見たものは。
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