移りにけり
第1章
如月の梅香る頃、紅琴女御(べにことのにょうご)は、今朝もおひとりで寝所からお出になり、浮かない顔をなさりながら、庭の花手水にお手を伸ばしておりました。
私は紅琴様が稚児の頃からお側に控えている、いわゆる紅琴様の乳母である、菫と申す者にございます。
最近の紅琴女御のご様子は、見るに耐えないものがあるのです。彼女は今のようにおひとりで、ぼんやりと時をお過ごしになることが、大幅に増えました。
それもその筈、近頃、隣町では有名な、知らぬ人はいない美女とまで噂される、白桃更衣(しらもものこうい)を、紅琴女御の夫である帝が娶ったからなのです。
子宝に恵まれない紅琴様にとって、帝のこの決断は大きなプレッシャーとな…
もくじ (8章)
修正履歴作品情報
弘徽殿女御(源氏物語)の立ち位置って、辛いと思うのです…なお話です
想像よりも長い話になりました。お付き合いくださった方々、この場を借りて心より感謝申し上げます
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