詭弁老師
第1章 一
弁早は孤高であった。
それは彼が「詭弁術」において世界に比肩するものなき達人であるという事実に大きく起因していた。
「詭弁術」とは今風に言えばディベートの技術、つまり、相手を巧みうに納得させる話術のことである。
だが、現代においてはこの「詭弁」という言葉にはマイナスのイメージがつきまとい、早弁老師は世間から誤解されること甚だしかった。
まだ文字のなかった太古より「詭弁士」は歴史の闇の中を暗躍しつづけてきた。
彼らは噂やデマ、今でいうフェイクニュースの流布などの情報操作にはじまり、歴史の分岐点における重要人物の説得や論破、言葉により要人を自殺に追い込む「暗殺」まで、およそ言葉をもって人心を左右する術に長…
もくじ (1章)
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