夏草
第1章
夜、近所の自動販売機の前で
弟と会った。
二人で、歩いて帰ってきた。
踏切が見えてきた。
レオが死んだ、踏切だった。
白いレオは
そこで真っ赤になったのだった。
そこで、ひっそり
レオは息絶えたのだった。
今、その場所には
はげしく
はじけるように
あお草が
しゃしゃり出ていた。
レオの血の
にじんだ大地に
わかい緑が
生まれ出ている。
僕と弟は、
緑色と
オレンジ色の快速電車を
無言で見送った。
「もう、慣れたよ。」
電車と警報機の騒音の中で
聞こえづらかったのだけれど、
たしかに、弟が
そう つぶやいたのが聞こえた。
もくじ (1章)
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