髪色金魚
第1章
彼の髪は、彼岸花みたいに赤かった。
彼は、ステージの上でギラギラ輝くスポットライトを浴びて、ギターを弾き、歌を歌う人だった。
パサパサのバンズに、薄っぺらい肉と変に甘いマヨネーズソース、中年オヤジのポマード漬けの髪の毛みたいにべたついたレタスが挟んであるハンバーガーを売るファストフード店で、私はフラれた。
それも、日曜日の午後一時。家族連れと学生達で賑わう大型ショッピングセンターの一階、東側の出入り口脇のフードコートでだ。
彼は、コーラとレッドホットチキンとポテトを頼み、私はバニラシェイクを注文した。
「他に、好きな人ができたんだよね」
左耳に連なっているピアスを指でいじりながら、彼が言った。
「その子…
もくじ (1章)
作品情報
付き合っていたバンドマンにフラれた主人公は、体調が悪い中、復讐の日を待ちながら、包丁を研ぐ日々を過ごす。気分転換に部屋の掃除をすることを思いつき、浴室の排水溝の髪の毛を取っていると、彼の髪に似た「赤い髪の毛」を発見する。不思議とどこまでも続く髪を引っ張り上げると、先にぶら下がっていたのは、一匹の真っ赤な喋る金魚だった。腹が空いていると言う金魚は、カビの生えた食パンや、卵の殻、カップラーメンなどをぺろりと平らげる。元気がない様子の主人公から、フラれた男の子供を妊娠しているかもしれないことを聴いた金魚は、「俺がそいつを食ってやろう」と提案する。
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