八月の魔女の夢
第1章
掴んだ彼女の腕は、うだるような八月の、その隙間にある涼夜に似て儚げで、だが触れる手のひらは確かに彼女を現実のものにした。
遠く、夜空に花火の音が響いて魔法が弾ける。
夏の終わり、僕は夢の中で逢った魔女に恋をした。
窓を透過した夏の日差しが机の上に乗せたスマホの液晶に反射した。
思わず目を瞑ったが、窓側後方のこの席を移動する気も、スマホを蒸れたスラックスのポケットにしまう気もない。
ただ、置く位置を少しずらしただけで、またイヤホンから流れる洋楽ヒップホップ集に意識を戻した。エラ・メイとかピットブルとか、詳しいわけでもないアーティストのおそらく有名な曲が耳に流れ込むが、もちろん歌詞の内容はさっぱりだし、聞…
もくじ (1章)
修正履歴作品情報
白井貴志は高校最後の夏、不思議な夢を見るようになった。
物語へのリアクション
お気に入り
2読書時間
じっくりコメント
4リアクション
6