香ほる
第1章
その人は
美しいながい髪をなびかせて
ぼくとただ
すれ違うだけの人だった
あ
ごめんさない
その人は振り返る時
軽く
ぼくにぶつかり
ぼくの白いシャツに口紅を
つけた
どうしましょう
あ
大丈夫ですよ
ぼくはその人に微笑んでいた
あ
美しい…
いえ
そう言う訳にはいきません
でもぼく急いでいるので…
今度お詫びさせてください
あの、よろしければ貴方さまの連絡先教えていただけますか…
そんな
そこまで、大丈夫ですよ
ぼくは本当に申し訳ない気持ちだった
口紅がつくなんてよくある話で
わざわざお詫びなんて
されたことなんてないのだから
じゃ
10分だけ
コーヒーご馳走させてください
ぼくは時計を見た
乗る電車の時間を確認してうなづいた
10分なら…
…
もくじ (1章)
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きみのかおりが…
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