紙芝居ガールズ
第1章 序 お父ちゃんが帰ってきた、紙芝居屋になって!
炎天下の中、ごっつい業務用自転車を押して歩く男。
板塀が続く住宅地。
防火水槽、石製のゴミ箱が、烈日に照らされ強いコントラストの影をつくっている。
舗装されていない砂利道。道の左右にはドブ板がある。
男は、壁の掲示板を覗き込む。
「真田丸本町内会」とある掲示板には、通天閣が描かれたポスターが貼られている。
エッフェル塔と凱旋門をモデルに作られた、古い通天閣の絵だ。
《大・大阪の榮光よふたゝび! 浪花のシムボル通天閣を再建しませう!》とある。
「ケッ、なにが大大阪の栄光や、しょうむな……」
それを眺めて無精髭の男が毒づく。
痩せて、髪はざんばら。左目は前髪で隠れている。
くたびれたランニング・シャツに、ラメ入りの黄…
もくじ (7章)
修正履歴作品情報
昭和27年、風来坊の父が帰ってきた!紙芝居屋になって! 大阪に住む小学生6年の女の子・ハルの、酒飲みで風来坊の、どうしようもない親父が帰ってきた。
親父は、「紙芝居屋」になっていた。
夏休み、ハルは父とともに神戸に向かう。父の「仕事」を手伝うためだ。
だが、そこでハルは同年代の、父親のもうひとりの娘、「てる」と出会う。
そして、父と一緒に暮らす「てる」の母親の家で暮らすことになるのだ。
同い年の異母姉妹の二人は、最初は半目し合うが、やがて絵を描くことが好きだということで意気投合し、紙芝居屋の「仕事」を手伝ううちに、紙芝居を書く人になりたいと思いはじめる。
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