僕と彼女が奏でる音
第1章 1
いた……!
また〝あの子〟が、いる!
譜面に視線を落とし、ギターを抱え直したそのとき、ふと気配を感じて顔を上げたら……。
いつものあの子が、すこし先でたたずんでいた。
透きとおった瞳で、こちらをジッと見つめている。
そこで僕は、彼女にニコッと微笑みかけ、それから目をつむって、すうっと深く息を吸い込み、ゆっくりと吐きだした。
よし!
僕は、ゆるやかにギターを爪弾き、昨夜できあがったばかりの新曲を歌いはじめた。
おだやかな風が吹き渡り、視界の端で彼女のスカートの裾が、ふわりと揺れる。
数小節ほど歌い終わったところで、おもむろに顔を上げた。
すると彼女は、相変わらずそこにいて、僕の新曲に耳を傾けていた。
とても静…
もくじ (6章)
修正履歴作品情報
彼女は、いつも現れた。
毎週土曜日、ストリートライブを行う僕の前に……。
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