灰色の香り
第1章 死神と煙草
私が『わたし』である事を、私は知っている。
私が『何が好き』なのかを、私は知っている。
私が『何者』であるのかを、私は知らない。
生まれた時の記憶なんて物はなくて。
いつ生まれたのか、なんのために生まれたのか、私が『わたし』である事を知っている私は、『わたし』について何にも知らない。
何にも知らない私を、楽しくさせる物がひとつ。
それは人の「死」だった。
不思議と人の「死」が私を落ち着かせた。
時には、才能を欲する青年に、寿命と引替えに才能を与えた。
しかし、才能を欲していた彼は、その丈に合わない才能を望み、願ったその時、寿命が尽きてしまった。
あれは実に滑稽だった。
才能に憧れ、才能を探して、その中で才能が…
もくじ (3章)
修正履歴作品情報
うまく吸えない煙草の匂いは、何故か私を落ち着かせる──
※この作品は「満月の夜に揺蕩う」と「朝のお掃除」と「僕は君の為に」という作品に関連しています。
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