たぶん
第1章
騒がしい物音で、目が覚めた。
親にも鍵を渡していない一人暮らしの部屋に、いともたやすく入ってこられるのは、ついこの間まで同居人だった人間だけだ。
「そう言えば合い鍵はあいつが持ったままだったっけ」なんてことに今更ながらに気付いた。
突然あいつが出て行ってからこの数週間、いないという事実を受け止めるので精一杯で、あいつが何を残して、何を持って行ったかなんてことまで気が回らなかった。
久しぶり。お帰り。お早う。
どの言葉を向けるべきか分からず、すっかり意識は覚醒したのにいまだ目を閉じたまま、動けずにいた。
目を閉じて、何て言おうか考えていたのに、いつの間にか耳に意識が集中した。
今、聞こえているのは、た…
もくじ (1章)
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