埃っぽい朝のはなし
第1章
埃っぽい朝を迎えるために眠ったわけじゃないけれど、だからってなんで眠ったのかなんて覚えてもいない。
とりあえずカルピスを原液のまま飲み干したみたいな甘気持ち悪い気分で目覚めたという事実は変わらないし、きみから連絡がこないことにも何も感じない。まぁ、「きみ」なんて存在しないんだけれど。
ぼくは部屋の隅で汚れきったこいつらと、本当はぼくになるはずだったあなたに怯えながら生きてる。
「ぼく」が生まれる前からずっとこの体の隅でひっそりと、名付けられることもなくそこにいるあなたはまるで、埃みたいに可哀想で、やわらかい。
誰よりも傷ついて、苦しんで悲しんで、それでも涙を流さないから、ぼくが代わりに泣いてしまう。…
もくじ (1章)
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