残しておきたい
第1章 あしあととはそくせき
その奇妙な依頼がユリシエール所謂紙の表紙の本を革で装丁して一端のヨーロッパ風の本に仕上げる装丁士である由奈の元にきたのは、かれこれ3日ほど前。
「御装丁には2ヶ月ほど要しますが?」
「構いません」
「そうですか。それでは御予算は?」
「○○万円で。」
「え?それでは1冊どころか10冊のお値段ですよ。」
「もちろん、10冊で、お願いします。」
「どなたかへのプレゼントですか?」
「ええ、作者への」
「作者?」
「作者ですか。」
「そうなんです。この『こんな夢をみた』は夏目漱石の『夢十夜』へのオマージュを基礎とした朗読劇用の原作として公募された大賞の10作品なんですよ。」
「それを紙の本に?わざわざ御自分でお金を出して…
もくじ (7章)
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