今日はダメ
第1章
戦(いくさ)の始まりは時を選ばないが、仲秋のころであれば、両者とも戦いやすかろう。
清四郎と善九郎は歳の離れた兄弟であった。
ともに六十を越えていた。
真夏の戦いでは、体力が続かない。
互いに最善の状態での真剣勝負を望んでいた。
戦(いくさ)がこの時期であったことに、感謝せねばなるまい。
清四郎は言う。
「六十になろうと七十になろうと、お前はかわいい弟だ。だが、戦いとなれば、手加減をするわけにはいかない!」
善九郎は答えて言う。
「歳月というものは怖いものです。わたしがまだ幼いころ、あれほど強かった兄も、今はもう……」
「何だと!」と清四郎。
「今日で、はっきりさせましょう!」と善九郎。
人は上下をつけた…
もくじ (1章)
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