雨と拍手
第1章
「こういう日は気分がいいな」
防音の音楽室ではなく、ただのいつもの教室。
男はゆっくりと手を伸ばして、ギターを手に取る。
いや、ギターではないかもしれない。 私は楽器や音楽には詳しくないので、ギターとヴァイオリンの違いもよく分かっていないからだ。
「詳しくないってレベルじゃねえよ、それは」
「音が鳴ったら一緒じゃないんです?」
雨足が強まったのを機としたように、男は楽器を弾きはじめた。
曲名があるのか、それとも適当に弾いているだけか。 詳しくないから分からない。
「……今更ですけど、なんで先輩は雨が降ったら音楽をするんですか?」
男は楽器を弾きながら答える。
「雨の音で多少鳴らしても気にならなくなるからな。 好き勝…
もくじ (1章)
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雨の日には音楽をしよう
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