鬼灯

ヒューマンドラマ・日常系

更新日:2020年5月20日

鬼灯

第1章 赤い花 白い花

 このまま死んでなるものか、と小柳は思った。
 庭に咲く向日葵や太陽を乱反射させるゆるやかな川、三両編成の汽車。小鳥のさえずり、農家の掛け声、学校の鐘の音。それら全てが筆の進みを遅くする。
 正面の窓を開け放っているから外界の音が煩いのだと気付いてはいるが、襦袢に染み込む冷たい汗を無視することはできなかった。鬱陶しく揺れる前髪を掻き上げると、額が空気に触れて気持ちよかった。徹夜続きの顔色は悪く、深く沈んだ眼窩は骸骨のようだった。
 先程からいっこうに埋まらない原稿用紙のマス目を睨み、書いては丸め捨て、書いては丸め捨てを幾度となく繰り返していた。半分以上がまっさらな紙が床に転がっている。それらを器用に避けな…

もくじ (1章)

  • 第1章 赤い花 白い花 第1章 赤い花 白い花

    第1章 赤い花 白い花

    2020年5月20日

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