君のそばに
第1章
-ある老人の話-
彼の朝は誰より早い
彼の日課は早朝散歩
次第に白む山々を背に
彼の視界も明るさを増す
体の熱が抜けてゆき
天にも登る心持ち
地に耳を当て目を閉じる
彼の朝は誰より早い
-ある従業員の話-
彼女はいつもせっかちで
彼女の辞書に“待つ”はない
今日も今日とて時計を見ては
わずかに苛立ち右左
300円を握りしめ
ここぞとばかりに歩みを進める
目にも止まらぬスピードで
向こう岸へと渡ってしまう
彼女はいつもせっかちで
-ある学生の話-
彼はみんなの注目の的
彼はその場を盛り上げたくて
先輩たちと飲み比べ
あれよあれよと勝ち続け
数えきれない空ジョッキ
そして最後の飲み比べ
空ジョッキから手を離し
喧騒の中で天を仰いだ
彼はみんなの注…
もくじ (1章)
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