if
第1章
「また今度会ったらさ」
運転席に乗り込もうとした彼は、あたかも「いま思い出しました」みたいな調子でそう呟く。
嘘だ。
絶対に、今だから言おうって思ってたんでしょ。
その「また今度」が来ることなんか、たいして期待してないくせに、それらしいことを言いたくて。
無言をもって、続きを促した。
「その時は、また笑い合える関係になりたいね」
その日はいつ来るの。
明日、明後日、来週、来年。
もしかしたら、来世、になるのかもしれない。
あなたは気づいてない。
人の心は移ろいゆくものだってことに。
その時に、わたしの中にあなたへの気持ちが残っている保証なんてない。
その時に、ああ逃した魚がでっかすぎたな、なんて気づいても、遅い…
もくじ (1章)
作品情報
なんでこんなことしか言えないんだろ。
物語へのリアクション
お気に入り
1読書時間
2分コメント
2リアクション
15