rust
第1章
潮のにおいを含んだ風が、ゆるやかに身体にまとわりつく。少し行けば海の見える場所に、その駅はひっそりと佇んでいた。路線開業当初から改築や補修を重ねて、今も使われている木造駅舎は、タイミングによって壁の色が異なっているモザイクのような見た目をしている。
レールを2本挟んで反対側にあるホームの背後には、初夏の季節にその緑色を映えさせる木々が揺れている。人影はなく、駅名標がぽつねんと立ち尽くすのみだ。
100円を稼ぐためのコストに700円以上がかかるといわれる路線にあるこの無人駅は、利用者僅少により、来年には廃止になってしまうという。確かに、駅前には朽ち果ててほぼ家のかたちを成していない建物が数軒あるだ…
もくじ (1章)
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意味「錆びる」
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