親愛なる我が子へ
第1章
「20歳の誕生日おめでとう!」
ホールケーキのろうそくに火を灯すと父は言った。
「ありがとう。」
僕はそう答えると勢いよく息を吹きかけた。
火が消えると、胸の奥から抑えようのない悲しみが流れ出た。
「母さんにも見せたかったな。」
母は僕が10歳の時に病気で死んだ。
もちろんその後10年間男手一つで僕を育ててくれた父には不満なんかない。
それでも、毎年この日になるとケーキを囲む人の少なさにどうしようもないさみしさを感じてしまう。
電気をつけると、父が僕の前に立っていた。
「成人祝いだ。」
そういうと父は僕に封筒を渡し部屋を出て行った。
封筒には見覚えのある字で僕の名前が書かれていた。
母さんの字だ
僕は封筒を開き中身を…
もくじ (1章)
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