完結

目に見えぬ波

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更新日:2020年7月20日

目に見えぬ波

第1章

 この国で一番有名だと思われる交差点に、わたしは一人で立ち尽くしていた。
 渋谷スクランブル交差点。
 夜の七時をまわろうとする頃合いだった。


 車の信号がすべて赤に切り替わってすぐに、歩行者信号が緑色に灯る。
 それを合図にして、数えきれないほどの人々が一斉にどちらかの足を前に踏み出す。
 人の波は、海のそれとは異なって、ぶつかって弾けたりすることなく交差して、いずれかの方向へ、すっと抜けてゆく。
 やがて緑色が赤色に変わると、まるで凪いだ海のように、ネズミ色のアスファルトとくすんだ白いゼブラだけの世界に戻るのだった。



 別に訓練されているわけでもないのに、よくもまあ。

 そんな間抜けな感想を胸に抱きながら、もう何度もその…

もくじ (1章)

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  • 第1章 第1章

    第1章

    2020年7月20日

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