深夜景
第1章 夜景
花宮湊は、夜の繁華街でゴミを拾っていた。ゴミというのは、社会に貢献しないどころか、害悪でさえある、知能の低い人々のこと、ではない。空き缶や、紙屑といった、いわゆる、ゴミのことだ。人の往来の隙間に火箸を伸ばし、踏み潰された煙草の吸殻を掴んで、ポリ袋に入れる。
まだ深夜とは呼べない時間帯の繁華街は人で溢れかえっている。賑やかな雑踏にわくわくする、なんてことはなく、花宮湊は、ただ淡々と、ゴミを拾う。周囲からは、奇怪な物を見るような目を向けられるが、そんなことは気にせず、拾い続ける。ゴミを、火箸でカチッと掴んで、ポリ袋にガサッと入れ、袋の口をギュッと閉める。カチッ、ガサッ、ギュッ、だ。
花宮湊には、東京…
もくじ (11章)
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心の汚れを掃除する
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