心ヤマナイ
第1章
アラームが鳴っている。
本能的に人に危険を察知させる
高くてよく響く異常を伝えるこの音。
異常とはなんだろう?
繰り返されるこの音は
鼓動の奥を通り抜けて脳になじむ。
これは私の夜明け前の、日常の音。
じんわりと背中に汗がにじみ、
息が上がり始めた頃、
アラームが止まった。
部屋に入ってきた上川先生が、
冷静な口調で1つの命の終りを決めた。
「もう充分だ。止めようか。」
私は肋骨の浮き出た青白い胸から目を離す。
心電図モニターに目を向ける。
さっきまで私が心臓マッサージをして荒れ狂っていた波は、嘘のように一瞬で止み、
凪が訪れる。
救命蘇生室そのものが静まり返り、家族の人たちが険しい表情で中に入って来る。
娘さんと思しき女…
もくじ (1章)
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