もみじのトンネル
第1章 -第1章- 彼と空白の匂い
関西国際空港に到着すると、
海外化粧品ブランドの、甘くてまとわりつくような人工的な匂いが、鼻をかすめた。
よく、『日本の空港は醤油の匂いがする』なんていうけれど、実際はそうでもない。
機械音がする無機質な空調設備の匂い、
ジャンキーなファストフード店の油の匂い、
色とりどりの消臭スプレーと制汗剤の匂い、
日本の空気は、窮屈そうだ。
検疫と入国手続きを済ませ、
預け入れのスーツケースを受け取り、タグを確認する。
「二ノ瀬 楓」
よかった、ちゃんと私ので合ってる。
税関審査もパスし、無事日本に入国完了。
私は、携帯電話を取り出すと
メールボックスの履歴から、「市原 いろは」の名前を探した。
画面をしばらくスクロールして、…
もくじ (5章)
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