ただ、恋をしただけのこと
第1章 1
教師に恋をする――なんてこと、時代や生活様式がどれだけ変わっても脈々と続けている人間は本当に不毛ないきものだ、と思う。
本当に本当に、心底、厄介なものだというのに。
たとえそれが、ただの、障害のないものでさえ。
僕は今、高校生活最後の夏の教室で、そんな恋心の周波数をまた拾ってしまっていた。
好ましい場所なはずの窓際最後尾の席は、この時期だけは太陽に焼かれて死んでしまいそうだ。体育で使ったタオルを洗って手すりに干しておいたら速攻で乾いていて、よりいっそう心が萎える。
「おい葛原」
「……」
「葛原っ! 早くテスト結果の紙取りに来なさい。あとが詰まってる」
担任が僕を急かすけれど、あんな時々裏返る男にしては高めの…
もくじ (2章)
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それは、誰が欲していた言葉だっのか――
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