星のない夜
第1章
もしも1つだけ、願いが叶うとしたら……
私はこう願うだろう。
「貴方と共に星になりたい」と。
夜空は霞のような淡い雲に覆われ、その隙間から覗く満月は妖しく煌めく。
ベランダに映る1つの影は、月の光を頼りにゆらゆらと揺蕩っていた。
もしも1つだけ、願いが叶うとしたら……
私はその温もりを求めるだろう。
独りになったこの世界で、私は星のない夜に一滴の涙を零した。
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『人は死んだら何になるの?』
数多の星が煌々と輝く夜空の下。寄り添い合う2つの影は、ベランダの床材を色濃く染め上げる。
『善良な人は星になるんだ。ほら、あの一番輝いている星は母さんだよ』
一際目立つ星を指さす父の瞳には寂し…
もくじ (1章)
作品情報
「もしも1つだけ、願いが叶うとしたら」
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