完結

Rap Rip Love

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更新日:2020年8月31日

Rap Rip Love

第1章

「ごめん。俺、大会とかももっと出たいし、東京に行くよ」

 シンガーソングライターの彼の口からその言葉を聞いたのは、セミも鳴かないほど暑い夏のことだった。何てことのない言葉のはずなのに、鳩がわあっと飛び去って行ったことを覚えている。私はその音にしばらく言葉を失っていたから、彼にすぐ答えを言うことができなかった。
 暑すぎて持っていた日傘が、手から滑り落ちるのを他人事のように感じていた。

「そっか」

 やっと言えた一言の最中にも、私の中で幾多もの思い出が入道雲のように立ち上っていた。
 付き合い始めてすぐ、駅を二人で歩いたことが思い起こされる。彼の大きなコートのポケットの中、手を繋いだ。彼は凍える冬から私を守って…

もくじ (1章)

  • 第1章 第1章

    第1章

    2020年8月31日

作品情報

彼には夢があった。その夢の中に、私はいなかった。

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