月の形がわかるまで
第1章
東京にも、鳥の鳴き声で目をさます朝があることを知った。
ひとりで眠ったはずなのに、目をさますとふたりで眠っていることにいつまでも新鮮に驚いた。
あなたは仕事柄帰りが遅いことが多く、帰ってきてからも夜更かしをするので、わたしは先にベッドに潜りこんで布団をあたためる。そしてたいていは先に起きて、朝の空気に触れたつま先をぎゅっと握りこんで、ゆっくりと身体を起こす。
薄暗い夜がつづきながら、ひたひたと朝が静かに訪れていた。
カーテンの隙間から薄明かりが入る。大きな手足を折り曲げて小さくなって眠っている姿をだれにも気づかれないように見つめて、かってに、しあわせになってしまうことを言ったら呆れられてしまうのかな…
もくじ (1章)
作品情報
ちゃんと暮らすことができていると安心する。目に見えないから傷だとわからないんだとあなたは言った。目に見えないものでよかったとわたしは思う。
もしも、あなたが歌うことを辞めてもきっと鳴り止まない。
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