夜をこめて
第1章
暖かな風が優しく吹き、ようやく長い冬の終わりが近づいていると感じる。もうすぐ春だねなんて在り来りな言葉をかけようと右隣に目をやる。もうそこに貴方が居ないことはとっくに理解してるのに。貴方にも似た春の暖かさにあてられたのかな?なんて小っ恥ずかしい思いを胸に留め、無意識に止まっていた足を踏み出し、再び小春日和の街路を歩き出す。
最愛の貴方を事故で失ったのは去年の暮れ、イルミネーションなんかが賑やかで、寒いのをいいことに恋人達の距離も近くなる頃。珍しく待ち合わせの時間に来ない貴方を待っている私に突然かかってきた貴方の携帯からの電話、そこで貴方がもう手の届かない場所に行ってしまったのだと知った。
街路…
もくじ (1章)
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キービジュアルが素敵だったので
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