白の天秤
第1章 1-1
父が蘭子さんを紹介してくれたのは、忘れもしない、中学三年生になったばかりの春。鮮やかな葉桜が街を彩り、肌寒さを忘れさせてくれたころだった。
初めて訪れたそのレストランは、メゾン・ドゥ・ウフという、卵料理の専門店だった。父の元同僚が脱サラをして一から立ち上げたお店なのだという。百名は軽く入るであろう店内は天井が高く、大きな窓から燦燦と春の日の光が降り注いでいた。店内の壁や床、テーブルなど全てが木で統一されていて、要所要所に配置された観葉植物と相まって、洗練された空気とナチュラルさが均衡した不思議な空間だった。いつも入る大衆的な定食屋とは異次元過ぎて、上京したての田舎者のごとく、ついきょろきょろと…
もくじ (14章)
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