母と我が名は芸無し猿
第1章
僕と、僕の母の話がしたい。聞いていってはくれないだろうか。
まず、僕らにとって、家族とは誰よりも他人でなければならない存在だった。その発端は、母と祖母の仲が悪かったことにある。二者の関係は姑と嫁ではない。実母と子だ。
祖母は女というものを憎悪していて、娘である母のことを「芸無し猿」と呼んでいた。祖母にとって、女とは泥棒であり、無能であり、何をしてもいい存在だった。
「ババアに飯を持ってって」
「ん、分かった」
と、まあ、彼女は愛や希望を踏み潰し続けた実母をババアと呼び、「口先だけで人を玩弄する女だ」と憎んでいた。仕打ちからすれば当然である。
さらに負けず嫌いの彼女は、生け花も茶道も免許皆伝、事務も出来、…
もくじ (1章)
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僕と、僕の母の話がしたい。少し聞いていってはくれないだろうか。
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