完結

雨傘

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更新日:2020年9月25日

雨傘

第1章

 あなたの傘になりたかった。
 あなたを傷つけるものすべてから、あなたを守りたかった。
 たとえ、晴れたら傘置き場の中に置き去りにされてしまうような、ビニール傘と同じ存在でも構わなかった。
 必要な時に、あなたが私の手を求めてくれるのならば。



***



 彼と出会ったのは、冷えた雨の日だった。
 新宿駅の片隅で、彼は濡れた身体を小さく丸めて震えていた。
「大丈夫ですか」
 そう声をかけてから、明らかに大丈夫ではない人に対してかける大丈夫という言葉には、何の意味もないことに気がついた。
 彼は怯えたように顔を上げた。目が合った。
 夜を水晶の中に閉じ込めたような藍色の瞳の中に、そこから目をそらせずにいる私が映っていた。
「大丈夫です…

もくじ (1章)

  • 第1章 第1章

    第1章

    2020年9月25日

作品情報

私は、あなたの傘になりたかった。

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