薄明にしたためるメッセージ
第1章
『こんばんは。
じいちゃん、お久しぶり。
そちらの天気はいかがです?
こちらはね。雨が降りそうで、なかなか降ってこないですよ』
◇
深夜といえど、現代の夜はそこそこ明るい。
こんもりと敷き詰められた闇色の雲は、色褪せた街灯の光を反射して、薄明るく光っている。
自分のように特に目が良いわけでもない凡人が、おおよそ周囲の様子を確認出来るほどの暗さであるにも関わらず、やはり暗闇の中にいると不安だ。
蛍雪の功なんて、よく言ったものだな。
現代の世でもこうなのだから、昔の人が過ごした夜はもっと怖かったんだろうな。
ぎっしりと袋に詰めた新聞を積んだ自転車を漕ぎながら、私はいつも思う。
ひんやりと澄んだ、少し湿ったような夜…
もくじ (1章)
作品情報
作品紹介文はありません。
物語へのリアクション
お気に入り
0読書時間
12分コメント
0リアクション
3