ハーフサイダー・メロディ
第1章
風の心地よい、五月の深夜。雨の音が薄く広がる闇の中で、私は一人。ベッドに身体を投げ出して、揺蕩う音楽に身を委ねる。でも、寝られなかった。
私には、想い人がいた。
二人とも音楽が大好きで、四六時中聴いていた。大学のサークルなんかも一緒にやって過ごしていくうちに、私はだんだんと彼に惹かれていった。
私は、彼の選ぶ音楽が好きだった。話をする度に、もっと彼のことが知りたくなった。
告白が成功し、二年。同棲を始めて一年の月日が流れようとしていた。
私達の習慣、それは二人でイヤホンを分け合い、互いの好きな音楽を聴き合うことだった。特に、夜、寝る前は必ずそうしていた。二人で寄り添った、心臓の鼓動すら聞こえてきそうな…
もくじ (1章)
作品情報
片耳のイヤホンと、空っぽの隣。
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