彼女のついた嘘
第1章
「私、嘘つきなんです」
初対面の彼女は、自己紹介するよりも先に嫣然たる微笑を浮かべて言った。
何かの予防線だろうか。
これまで妙な噂を聞いたこともなく、人気に驕ることのない人当たりの良い女優だと評判の斉木ルイから、予想外の一声を受けて、戸惑った。
何も言葉を返せずにいると、彼女の方から「インタビューの時間は三十分しか取れないのはお知りですよね」と言われ、ハッとした。一分も無駄にはできない、と彼女に会う前は思っていたのに、会った瞬間そんなことは抜け落ちた。
「すみません、それじゃ早速よろしいですか?」
「もちろん。どうぞ、お座りになって」
促されて立ち尽くしていたことに気づいた。
「映画、関係者向けの試写会…
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