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拷問彼女ギロチーヌちゃん 完結

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 高校二年生・伊乃地霧斗はある日、不思議な美少女ギロチーヌと出会う。その出会いはまさに霧斗が凄惨な殺戮事件の起きた現場で自らも殺されようとしている時だった。
 次々に人々を襲い始める数々の拷問怪人たち。
霧斗とギロチーヌは拷問怪人との戦いを繰り広げる。人智を超えた想像以上の強さを誇る拷問怪人に苦戦する霧斗とギロチーヌ。
だがその解決の武器となるのは霧斗のスケベなタイムリープ能力だった……?

※2018年4月9日、15万文字ちょうどで完結いたしました(^^♪
応援ありがとうございました!!



1位の表紙

2位

目次

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1.殺戮現場で出会った少女

『悲劇の王妃、マリー・アントワネットを処刑した断頭台(ギロチン)が遂に日本へ上陸! 十月十五日(日)より当館限定の堂々公開!』

 センセーショナルな謳い文句のつもりなのか、人々の興味を惹こうと思ってつけたコピーなのだろうが、見ていて溜め息しか出て来ない。

「はあ~。週末になるといちいち気持ちが鬱になるよなあ」

 ディスプレイを凝視し続けていた目を逸らし、両手を組み思いっきり伸びをする。

 伊乃地霧斗(いのちきりと)は土曜の夜になると、自室のパソコンでネットサーフィンに明け暮れるのが定番になっていた。

「日曜に単独行動する場所って言っても、どこも行き飽きたからなあ……」

 日曜の一日を過ごす場所をネットで探す。そんな行為をパソコンの前で延々と繰り返すだけでも、精神的にけっこう疲れるものだ。

 高校二年生にもなって、いや、もはや高校二年生にもなってしまったからなのか、霧斗には友達と呼べる友達がいなかった。

「同年代の男子は完全に二極化している」

 独り言を呟き、霧斗(きりと)は一人、ウンウンと頷いた。

 日曜日は決まって彼女とデートをするリア充男子か、同年代の女子に殆ど相手にされず日曜ともなると決まって男同士でつるむ非リア男子か、その二極化だ。

 もちろん、ボクは後者の方だけど、と霧斗は一人納得して、ハッと気付いた。

 いや、違うな。彼女も居ないし、モテない男同士でつるんだりもしない。日曜ともなると決まって一人孤独に過ごすだけ……となると、ボクは前者でも後者でもない、第三勢力だ! 

 なんだか聞こえの良い第三勢力という言葉に気分を高揚させ、一人で相槌を繰り返しているうちに、霧斗は知らぬ間の深い眠りに落ちていたのだった。

 翌日。

 東京、御茶ノ水界隈の某大学キャンパス内。国内随一と言われる拷問器具専門の博物館が併設されていた。

「はあ~。気が付いたら勝手に足が向いてしまったというヤツだ……」

 霧斗は昨晩ネットで見たこの博物館のサイトがどうしても頭から離れず、気が付けばサイトの誘い文句に引きつけられるようにしてこの場所まで出向いてしまったのだった。

「へええ、けっこう暇人が多いものなんだな」

 博物館の入り口では老いも若きも関わらず大勢の人たちが列を作って並んでいた。

「ただの普通のギロチンなら珍しくもなんともないが、かのマリー・アントワネットの首を刎ねたというギロチンそのものだぜ? その本物がフランスから日本に来るとなると、そりゃ珍しくて見たくなるというのが人間の心理というものさ!」

 霧斗の独り言が耳に入ったのか、前に並んだ眼鏡を掛けた大学生らしき男性が話しかけてきた。

「ははっ。そういうもんですかねえ……」

 霧斗は精一杯の愛想笑いを返すのだった。

「そういうもんだよ。しかも今日は公開初日だぜ。悲劇の王妃の首を刎ねたギロチンを我先にこの目で拝みたいと思うのが人間の心理というものさ!」

 男はそう言いながらも落ち着かない様子で列の前方をしきりに気にしていた。

 入り口に並んだ列も動き出し、いよいよ館内へと足を踏み入れる。

「君っ、あれだよ! あれ! ホラ、見たまえ!」

 部屋の中央に人だかりが出来ているスペースがある。さっきの大学生風の男が背伸びをしたり、飛び跳ねたりしながら、必死に人だかりの向こうの展示物を指差している。

「……っていうか、人の頭しか見えないし……」

 

 霧斗も、爪先立ちをして懸命に見よう見ようと試みるも、その視界は他人の後頭部に邪魔されてしまっていた。頭と頭の隙間から、ようやく垣間見ることが出来たのは、腐りかけているような二本の木の柱の間に錆びた刃が吊るされた古ぼけた装置だった。

「あれがマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンなの? こんな錆びて腐ったポンコツが?」

 霧斗にとってはなんとも期待外れとしか言いようのない代物だった。

「なに、フランス革命の時代から既に二百年以上経っているからね。古くなってしまうのは仕方がないさ。とはいえ、あのギロチンはまさに歴史の生き証人とも言える貴重な代物だぞ!」

 大学生風の男は外した眼鏡を手に、そのレンズを遠ざけたり近づけたりしながら、興奮気味にまくしたてた。

「ボクはあっちの方がなんだか惹かれちゃうな……」

 霧斗が後ろを振り向くと、その向こうには、女性の形をした鉄製の大きな人形のようなものが置かれていた。

「あれはアイアン・メイデン。別名、ニュルンベルクの鉄の処女とも呼ばれる拷問具さ。見てみたまえ、人形の腹が開いて、その内側に何本もの釘が突き出しているだろう? あの中に人を閉じ込めたうえで、蓋を閉めると、中の人間はたちまち串刺しにされちまうって寸法さ!」

 眼鏡を掛け直した大学生風の男が冷静に説明をする。

 たしかに男の言うとおり、人形の腹部には左右に開く扉のような物が付いていて、ちょうど扉が開いた状態で展示されていた。丸見えとなった人形の内部は空洞で、人間が一人入り込めそうなくらいの広さがあった。しかし扉の裏側には無数の釘が突き出すように生えている。扉を閉じれば最後、中の人間は、その頭の先から足の爪先に至るまで身体中を鋭い釘で貫かれてしまう。心臓でも貫かれれば、生きて外へと出るのは不可能だろう。

「ふええっ、間近でよく見ると、なんだか怖くなってくるなあ……」

 霧斗はもしも自分が人形の腹の空洞に入ったら、と想像しているうちに、背筋にゾクゾクッと寒気が走るのを感じた。

「……ごめん、なんだかトイレに行きたくなってきちゃった」

 霧斗が鉄の人形に背を向ける。

「ああ、ごゆっくり……」

 大学生風の男の返事が聞こえたその直後だった。

 ギギギッ……ガガガガガッ……

 金属の軋むような音が霧斗の背後から聞こえてきた。

「アイ……アン……メイ……デン……」

 同時に女の掠れたような低い声が聞こえる。

「んんっ?」

 霧斗がふっと背後を振り返る。

「うわああああっ! た、助けてくれえーっ!」

 見ると、大学生風の男が手足をジタバタと藻掻かせ、喚いていた。男の肩をガシッと鉄の腕が掴みあげている。

 ギギギッ……ガガガガガッ……

 金属の軋む音をたてながら、展示されていたはずのアイアン・メイデンが動き出していた。元々、手足の付いていない胴体部分と頭だけの鉄の人形であったはずなのに、その胴体から二本の腕と足とが生え出していた。

「な、なんだ、コレえええっ?」

 霧斗は催していた尿意も忘れ、大学生風の男の元へ駆け出した。

「メイ……デン……強制……執行……」

 ズズズズッ、と大学生風の男の身体が鉄の人形の開いた腹部へと押し込められていく。

「嫌だ! 嫌だ! 俺はこの中になんて入りたくないんだよっ!」

 泣き喚く大学生風の男の身体が、人形の内部の空洞にスッポリと納められた瞬間、ギギギ、バタン! と鉄の扉が閉じられた。

 グサッ、グサッ、ブスリッ、ブスリッ、グサリッ、ブスリッ、と肉を突き破る音が連続して漏れ聞こえてくるような気がした。

「執行……完了……」

 パカッと鉄の扉が開かれる。静寂がしばらく続いた後、ポトリ、とレンズが割れて大きくヒビの入った、ひしゃげた眼鏡が扉の中から転がり落ちてきた。

「ねえ……だ、大丈夫なの?」

 霧斗は静けさに耐えられず、身を乗り出して鉄の扉の内側を覗こうとした。

 ドサリ。

 霧斗の顔を覆うように、生温かく生臭い何かが覆い被さってきた。

「ひ、ひいいいいいいっ」

 霧斗の目の前に、眼球の抉れた血塗れの男の顔が覗いていた。

「うわああああああああっ……」

 霧斗が思いっきり振り払うと、びしゃっと飛び散る血飛沫とともに、床に穴だらけになった男の死体が倒れ込んだ。顔面、腕、腹、腰、股間、足、その身体中の至る部分の肉が抉れている。腹部の穴からは内臓が飛び出している。

「きゃああああああっ! 人が! 人が死んでいるわっ!」

「に、人形に閉じ込められた青年が死んだぞーっ!」

 周囲の入場客たちが悲鳴を上げ、パニックに陥っている。

「メイ……デン……再……起動……」

 ズシン、ズシンと足音を響かせながらアイアン・メイデンが歩き出す。

 ギギギッ……ガガガガガッ……

「うわぁー、逃げろおおおーっ」

「きゃーっ、助けてえーっ」

両腕を高く掲げ、掴みかかろうとする鉄の人形に、入場客たちは一斉に逃げ出し、出口へ殺到する。

「わああっ、放せーっ! 放せったらあー!」

 逃げ遅れた霧斗の襟首がガシッと鉄の腕に掴まれる。

「メイ……デン……強制……執行……」

 ズズズズッと霧斗を掴んだ腕が、その小柄な身体を腹部の空洞に押し込めようとする。

「わああーっ、ボクは死にたくなんてないよーっ! まだ女の子とも付き合ったことないのにいーっ!」

 霧斗は藻掻きながら必死に抵抗するも、ゴトンと空洞の底に突き落とされてしまう。

「ひえっ」

 ひんやりとした鉄の冷たさが霧斗の尻に伝わる。

 ギギギィ……空洞の暗闇の中に光を差し込ませていた唯一の出口が、その外側から閉じられようとしていた。

「イヤだーっ、閉めないでくれようーっ……」

 霧斗が絶叫したその瞬間だった。

「錆びて腐ったポンコツで悪かったわねー! アンタのその腐りきった性根、アタシが叩き直してやるんだからー!」

 怒った女の子の声が急に聞こえたかと思うと、閉まりかけた鉄の扉の内側へ挟み込むように外から白い手が割り込んできた。

 バァン! と勢いよく閉まりかけた鉄の扉が開かれる。すると、一人の少女が空洞の内部を覗き込んでいた。

「ボンジュール! ジュ マペール ギロチーヌ! まあ、日本流に言えば、アタシの名前はギロチーヌですって名乗ったんだもん!」

 セミロングの亜麻色の髪をした、碧眼の少女だった。見た目に十代後半くらいだろうか。ゴシック・ロリータのドレスに身を包んだその少女は、見るからに西洋人風の雰囲気をしていた。

「うわあっ? き、君は何なんだよ? い、今がどんな状況か分かっているのっ?」

 突然の白人美少女の出現に霧斗が動揺する。

「まあ! せっかく人が自己紹介したのに、何よその塩対応は! じゃあいいもん! コレ、閉めるよ?」

 そう言ってギロチーヌと名乗る少女はその唇を不機嫌に突き出すと、手に掴んだ鉄の扉を閉じようとした。

「わああっ、待って! 閉めないでっ! お願いです! 閉めないでくださいいいっ!」

 霧斗が慌てふためき、ギロチーヌを止めようとした時、

「グゥガガガッ? 妨害者……強制……排除……」

 アイアン・メイデンの両腕がガシッとギロチーヌの胴体を掴みあげた。

「もう! 乙女の身体はデリケートなんだからぁ、そんなに乱暴に掴まないでくれます?」

 ギロチーヌは、ぶっきらぼうに怒鳴ると、その白く細長い両腕を交差させるようにして重ねた。

「ギロチン変化! メタモルフォーゼ!」

 重ねたギロチーヌの腕が鋭い刃へと変形する。

「斬首執行(デカピタスィョン)! この首、あの首、飛んでいーけ!」

 ギロチーヌが叫び、重ねた両腕をアイアン・メイデンの頭部へと向けた。

 シュルルルルッという空気を切り裂く音をたて、鋭い刃と化したギロチーヌの腕が横方向にスライドし、アイアン・メイデンの首を目がけて襲いかかっていく。

 その刹那、スパァーンと弾けるような気持ちの良いほどに軽快な音を響かせ、アイアン・メイデンの頭部が弾け飛んだ。

「メイ……デデデデデデ……ンンンンン……」

 咆哮にも似た叫び声をあげながら、くるくるくるっ、と猛烈に回転しながらアイアン・メイデンの頭部が空中を舞う。

 やがて頭部はガゴンと天井に激突、そのまま落下し、ころころと床を転げまわった。

 ギギ……ガガ……ガタン……

 その頭部を無くしたアイアン・メイデンの胴体は動きを停止、ギロチーヌを掴みあげていた腕も、だらしなくブランと垂れ下がるのだった。

「えへ。アタシの柄にもなく人助けしちゃった! ねえ、大丈夫? いつまでその中に入ってるつもりなのー?」

 ギロチーヌは少し照れた表情で、鉄の空洞の内部を覗き込んだ。

「えっ? あ? だ、大丈夫だよ……」

 霧斗は自分の身に起こった一連の事態をうまく整理できず、ただただ呆然とし尽くしていた。

「こんな人形のお腹の中なんて早く脱出しなきゃだ……」

 空洞の中で霧斗がその腰を上げる。

「手貸すわよー」

 ギロチーヌが笑顔で腕を差し伸べる。

「どうもありがとう」

 霧斗が少女の差し伸べる腕を掴んだその瞬間、プシューと霧斗の右手から鮮血がほとばしった。

「うぎゃああああ! 手が切れたああああっ!」

 霧斗が右手の猛烈な痛みに泣きじゃくる。

 霧斗が自分が掴まされた物に目を向けると、それは冷たい光沢を放つギロチンの刃であった。

「あ、ごめんねー。腕元に戻すの忘れてたー」

 悪びれた様子もなくギロチーヌが笑う。

「忘れてたじゃないよ! こうなったらお返しだあっ!」

 鉄の人形の外へと勢いよく飛び出た霧斗が無事な左手で、むにゅうっと少女の胸を思いっきり揉んだ。

「イヤああああっ! 何するのよーっ!」

 ギロチーヌが霧斗の頭を叩こうとその腕を思いっきり振り上げる。

「ぎえええっ!」

 スパァン。気持ちのいいくらいの肉を切り裂く音が響く。

 ひゅるひゅるひゅるっと霧斗の首が空中を舞う。

「いけない。またやっちゃった……」

 ギロチーヌは宙を舞う霧斗の首を目で追って、その心を後悔の色に染めた。

「ボク、死んだ……?」

 霧斗がハッと気が付くと、そこは照明の灯った明るい空間だった。

「うわっ眩しいっ! こ、ここは天国なの?」

 あまりの眩しさに目を慣れさせつつ、周囲の光景に目を向ける。

「あれ? これはボクのパソコンだ?」

 まず目に映ったのは机の上に置かれたデスクトップ型のパソコンだった。

 どうやらここは霧斗の自室のようであった。

「あれ? ボクは首を刎ねられたんじゃなかった?」

 霧斗は自分の身体に目を向けて見た。ちゃんと胴体も手も足もくっ付いているようだった。切られたはずの右手を見ても、なんの傷も付いていない。

「一体どういうことなのさ……?」

 霧斗はとりあえず、パソコンのディスプレイに映し出されている物に目を向けた。

『悲劇の王妃、マリー・アントワネットを処刑した断頭台(ギロチン)が遂に日本へ上陸! 十月十五日(日)より当館限定の堂々公開!』

 そこにはセンセーショナルな謳い文句が表示されていた。

「これは拷問博物展の宣伝ページじゃんか!」

 多少の驚きとともに、霧斗はなんとなしに画面右下の日付表示に目をやった。

「ええっ? 今日は十月十四日の土曜だって……?」

 何かの間違いだろうか。何度目を向けても、液晶画面の日付表示は十月十四日の土曜日の表示だった。

 もし日付表示の通り、今日が十月十四日の土曜なら、霧斗がギロチンを見に博物館に足を運んだ日の前日ということになる。

「パソコン壊れてるんじゃないのか」

 パソコンの電源を切り、再起動を行なう。

 それでもやはり画面の日付表示は十月十四日の土曜日のままだ。 

「なんだか訳が分からないよ、こういう時は寝るに限る!」

 考えても分からない時はとりあえず考えるのを止める。それが面倒くさがりな性格の霧斗の持論だった。

 霧斗はそのまま深い眠りに落ちたのだった。

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  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/01/19)
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すごい発想のお話ですね! でも続き気になります(*^ ^*)
ちょっと子育て中で自分時間が夜中なので読み進めてく時間が真夜中ってドキドキしますが・・・
楽しみです

Hinaminami

2018/7/15

8

 Hinaminamiさま
お読みいただきありがとうございます(^^発想を褒めていただき、嬉しいです。いちおう、コミカルな感じでそんなに怖くない雰囲気を心掛けたつもりではおります!
ありがとうございます!!

作者:湊あむーる

2018/7/15

9

これ、面白いですね。残酷な中にギロチーヌちゃんのかわいい描写が入って、絶妙なバランスですね(^^)
次を早く読みたいですが、その前にコメントさせて頂きました。

ちなみに、私の誕生日が10月15日なので、勝手に超親近感が(^^)

青楊

2018/9/7

10

 青楊さま。コメントをいただき、ありがとうございます(^^♪ギロチーヌちゃんの作品ですが、執筆当初、ギロチーヌは残酷な性格のキャラにするのか、どうするのか、と構想を考えていた時に、作品のテーマ自体が残酷(拷問なので)なので、ギロチーヌはむしろ親しめる正確にしようと思い、こうなりました(^^♪
10月15日は、そうなのですね!ギロチーヌ記念日かつ 青楊さんバースデーとして祝日にするよう国会で決め…笑

作者:湊あむーる

2018/9/7

11

親しめる正確→性格、です笑

作者:湊あむーる

2018/9/7

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とじる

2.死んだ男との再会

「はあ~。気が付いたら勝手に足が向いてしまったというヤツだ……」

 翌日、気が付けば霧斗の姿は、御茶ノ水界隈・某大学キャンパス内の拷問博物展の入り口にあった。

 でも、これでいいんだ……。

  老いも若きも含めた大勢の人の作る列の最後尾に並びながら、霧斗は思った。

  もし、死んだと思ったボクが本当に日付を遡って、昨日に生きて戻ったっていうのなら、今この時点であの男の人はまだ生きているはずなんだ。

 今ならまだ間に合う。思い出しただけで身の毛もよだつ、あの忌まわしい出来事を今ならまだ避けることができるはずなんだ……。

  そう思いながら霧斗の脳裏に甦ったのは、身体中の至る部分に穴が開けられ、その肉の抉られた、大学生風の男の無残な死体だった。

  それに、この博物館に来れば、ギロチーヌとかいう青い瞳のあの少女にもまた出会えるかもしれない。

 あいつ、ボクの首を刎ねやがって。

 ボクはいまだに誰とも女の子と付き合ったことが無いというのに、『彼女いない歴=年齢』のまま、危うく天国に逝ってしまうところだったじゃないか……。

  霧斗が哀しみと怒りの混じったなんとも複雑な想いに半ばうわの空になっていると、

「やあ、君も歴史が好きなのかい? 普通のギロチンなら珍しくもなんともないが、かのマリー・アントワネットの首を刎ねた本物のギロチンが、フランスから日本に来るとなると、そりゃ珍しくて見たくなるのが人間の心理というものだからねえ!」

 霧斗のすぐ真後ろから、聞き覚えのある男の声がした。

「ああっ! あなたはっ……」

   背後を振り返るなり、霧斗は男に抱きついた。

「うわあああっ! 生きて……生きているんですねえええっ! あなたがこうして生きている姿を見られるなんてボクは、ボクはあああっ……」

「げええっ? なんだね、君いっ! 俺が生きているのは当たり前じゃないか! どうしていきなり抱きつくんだ? 俺は男同士でこんな趣味はないぞ!」

 泣きながらしがみつく霧斗に、眼鏡を掛けた大学生風の男が困惑する。

「あなたはこの博物館に入っちゃいけないんだ! 特にアイアン・メイデン、あの鉄の人形には絶対近づいちゃだめなんだ!」

 しがみついたまま、男の顔を見上げ、霧斗は真剣な眼差しで懇願するように訴えかけた。

「はあ? 何でだね? 博物館に入るのも、アイアン・メイデンを観るのも俺の自由だろう? 君にとやかく言われる筋合いはないぜ?」

「そ、それは……その……」

 男に訊き返され、途端に霧斗は口ごもってしまう。

 どうしよう。

 あなたはアイアン・メイデンに襲われて死ぬんです、と事実をそのまま言うべきだろうか。

 でも、そんなことを正直に伝えたところで信じてもらえるだろうか。

 それに、どうしてそんなことが分かるんだと訊かれたら、ボクは一度死んで気が付いたら日付を遡って昨日に戻っていたんです、という話をしなくちゃいけなくなるかもだ。

 そんなことを言って頭がおかしいと思われたら、どうにもならないぞ……。

 霧斗が頭の中で、ああだ、こうだ、と考え込んでしまっていると、

「ホラ、そろそろ開館だ! 入り口が開くぜ?」

 と大学生風の男が行列の前方に目を向ける。

   ゾロゾロと列に並んだ人々が前へ進み始める。

「君が行かないのなら、俺は先に行くよ」

 男は、前へ進もうとしない霧斗を置いて歩き出した。

「とにかく! アイアン・メイデンなんか見ちゃだめなんだ! あれは危険なんだよ! 近づいちゃだめなんだ! 中に入らず、このまま帰るべきなんだ!」

 霧斗は、男の腕を掴み、必死でその場にとどまらせようとした。

「うるさい! 何を見ようと俺の勝手だろう! こうなりゃ、アイアン・メイデンをとことん見てやろうじゃないかっ!」

 男は怒りに任せ、霧斗の身体を突き飛ばした。

「わあっ!」

 霧斗はそのまま後ろへ勢いよく倒れ込んだ。

「きゃっ……」

 霧斗の背後から小さな悲鳴が聞こえた。

 霧斗は倒れようとする自分の背中を、誰かの腕が支えようとしてくれている感触を覚えた。

「危ないじゃないですか。気をつけてくれないと困りますね」

 少しハスキーな感じの若い女の子の声だった。

「ご、ごめんなさい……」

 霧斗は申し訳なさそうに小さい声で謝りながら、その女の子に目をやった。

 青いショートの髪のボーイッシュな雰囲気の少女。十代後半くらいだろうか。

 釣り目がちな青い瞳が理知的な印象を感じさせる。

 きっちりネクタイを締め、パンツスタイルの燕尾服に身を包んだその服装は、まるで貴族の家にでも仕えるような執事を連想させた。

「そ、そのコスプレ、とても良く似合っています……」

 ぶつかっておきながら、少女の姿をジロジロと見つめてしまった後ろめたさから、霧斗はついつい褒め言葉を口にした。

「それはどうも。褒めて貰えて嬉しいですね」

 燕尾服の少女はニコッと微笑み返すと、そのまま博物館の入り口へと姿を消していった。

「あれっ? 今ボク、女の子を褒めちゃったぞ……?」

 今まで同年代の女子を褒めたことなど一度もないと霧斗は自覚していた。

 なので、青い髪の燕尾服の少女に無意識にでも褒め言葉をかけることができたと思うと、胸の奥に何とも言えない喜びの気持ちが湧いてくるのを感じたのだった。

「いけないっ! あの大学生の男の人を助けないと!」

 胸に感じた喜びも束の間に、霧斗は博物館の館内へと駆け込んだ。

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とじる

3.問い詰める鞭

「おかしいな? どこにも居ないぞ……?」

 霧斗が館内を見渡すも、大学生風の男の姿が見当たらない。

「まず最初に見るとすれば、このギロチンのはずだよな?」

 ギロチンの前にできている大勢の人だかりを掻き分ける。

   一人一人の顔をくまなく見ても、この人だかりの中にも大学生風の男の姿は無かった。

「それにしても、本当に錆びて腐ったポンコツだなあ……」

 霧斗の眼前に、腐った木の柱に錆びた刃の吊るされた古ぼけたギロチンが現われる。

 その時だった。

   一瞬、錆びた刃がピカッと金色の光を発したように思えた。

「うわっ? なんか光ったぞ?」

 霧斗が目で追うと、光はすぐに消えてしまった。

「気のせいだったのかな……」

 錆びた刃からフッと目を逸らし、霧斗は人だかりの外へ出た。

 すると、女性の形をした鉄製の大きな人形が目に入った。

「アイアン・メイデンだ!」

 目にした瞬間、ゾクゾクッと背筋に冷たいものが走る。

「も、もうすぐこの鉄の人形が、動き出すんだ……」

 開かれたままの人形の腹部の扉に生える無数の釘。

   この無数の突起が生身の肉を貫き、喰いちぎるようにその内臓を抉り出す。

 数分後か、数十分後か。

  僅かな時間で訪れるであろう残酷極まりない未来の映像(ビジョン)が脳裏に浮かぶ。

  霧斗は緊張からなのか、微かに感じる尿意にその身を震わせた。

「くそっ、なんだってこんな時に……」

 股間を押さえつつ、小走りに霧斗は化粧室を探した。

「やっとトイレが見つかったよ……」

 男性用の化粧室に足を踏み入れると、小便器はすべて使用されていた。

「うわあっ、漏れちゃいそうだよ……」

 霧斗は仕方なく、ドアの開いていた個室へと足を踏み入れた。

「ふう。漏らすくらいなら、こうして個室で用を足しちゃったほうがいいもんね」

 ズボンを下ろして洋式の便座に腰掛け、霧斗は深く溜め息を付いた。

 その時、ポタッ、ポタッ、と赤い滴が便器の中へと垂れ落ちてくることに気付いた。

「へっ? 何この赤い水滴? ボク、鼻血出てる……?」

 霧斗は自分の鼻を触ってみた。指に血が付くわけでもなく、鼻血が出ているわけでもなさそうだ。

「おかしいな。どっかから出血しているわけでもないみたいだしな?」

 腕や腋の下や胸や脇腹など身体のあちこちを調べてみても、出血するような傷は見当たらない。

「もしかして上から?」

 霧斗は天井を見上げてみた。

  その瞬間、ドサリと生温かく生臭い何かが霧斗の顔に覆い被さってきた。

「ひ、ひいいいいいいっ」

 霧斗の目に飛び込んだのは、レンズの割れた眼鏡を掛けた男の顔だった。

「わあああああああっ!」

   反射的に男の顔を振り払う。

  ドアと便器の間にうずくまるように挟まったのは、身体中のあちこちの皮膚を縞状に剥ぎ取られ、血塗れの肉が露出した、あの大学生風の男だった。

「ど、どういうことだよっ? アイアン・メイデンに殺されるはずなのに……?」

 慌てて霧斗が個室のドアを開く。

  ドアの開閉とともに床に倒れ込んだ男の遺体を跳び越え、霧斗は男性用化粧室の出入り口から逃げ出そうとした。

「で、出られない……?」

   廊下に通じるはずの男性用化粧室の出入り口は、自由に出入りができるように廊下との間に仕切りは設けられていなかった。

  しかし、霧斗が一歩、廊下へと足を踏み出そうとすると、爪先が目に見えない何かにぶつかり、押し返されてしまう。

「男性トイレの中に閉じ込められた……?」

 男性用化粧室の奥へと戻り、あらためて見渡す。

   小便器を使用している者は誰もおらず、すべての個室のドアも開け放たれていた。

   霧斗一人だけが閉じ込められた形となっているようだ。

「お前はどこまで知っている?」

 突然、どこからともなく低い女の声が聞こえてきた。

「だ、誰? ここにはもうボク以外、誰もいないはずだ!」

 霧斗が声の主を懸命に探す。

   すると、ポタッ、ポタッ、と霧斗の足元に赤い水滴が垂れ落ちた。

「まさかっ、天井……?」

 霧斗は思いがけず天井を見上げた。

「ご名答。ここですよ」

   ニタアと口角を上げて冷たい笑みを浮かべる女の姿がそこにはあった。

   青いショートの髪の燕尾服を着た少女が、男性用化粧室の天井に足の踵を付け、逆さまに立っていた。

「君は、博物館の入り口でボクがぶつかった子じゃないか……」

 霧斗は、そのコスプレの似合うことを褒めたばかりの青い髪の少女と、まさかこんな場所でこんな再会の仕方をするなどとは思いもしなかった。

「君、どうしてこんな所に? ここは男子トイレだよ……?」

「ふふふ。まずは、私の問いかけに答えて貰いましょうか」

 青髪の少女は釣り目がちな瞳をキッと鋭く尖らせた。

 シュルルルルルッ。

   逆さまの少女の腕から細長い鞭のような物が繰り出される。

 麻でできた細いロープが百本ほど束ねられた、わら束のような見た目の鞭。

   一本一本の麻の先端には固い結び目が作られている。

 ビシッという激しく肉を叩きつける音が男性用化粧室に響き渡る。

「ぎゃあああぁぁぁッ! 痛いっ! 痛いよおおおっ!」

 霧斗の右肩に鞭が炸裂する。たった一撃で霧斗の着ていたシャツは破け、皮膚の剥がれた右肩が露出した。

「もう一度訊きますね。お前はどこまで知っている?」

 そう言いながらヒラリとその身を翻し、青髪の少女が化粧室の床に着地する。

「さあ、いい子だから答えなさい。お前がどこまで知っているのかを……」

 青髪の少女が鞭を片手に、霧斗を睨み付けながらジリジリと歩み寄る。

「な、なんのことおっ? ボ、ボクが一体何を知っているって言うんだよぉーっ……」

 恐怖にその身を震わせ、涙ぐみながらも、霧斗は必死に青髪の少女に問い返した。

「ふふふ。そこに死体で転がっている眼鏡の男もそうやってシラを切っていましたよ。博物館の入り口で二人してあんなに大声でアイアン・メイデンの話をしておきながら、何も知らないなんてこと、ありますか?」

 青髪の少女はそう言いながら、その華奢な白い手で霧斗の頬を撫でまわす。

「ア……アイアン・メイデンだって? き、君はどうしてそのことを……?」

 霧斗は頬に触れる手の感触にゾッと身体を竦めながら、怯えるような目で少女の顔を見つめ返した。

「訊いているのはこっちですよ。質問に質問で返すな。このド畜生がっ!」

 青髪の少女はその目を吊り上がらせ、ふたたび手にした鞭で霧斗の腹部を打ちつけた。

「ひいいいいぃぃぃぃ……ボ、ボクは本当に何も知らないんだよおっ……」

 霧斗の腹部の皮膚がシャツの生地ごと捲れ上がり、腹部の肉が露出する。

「そこのマヌケな眼鏡の男と同じように、どうやら貴方もこのスキニング・キャット様の猫鞭で地獄へ送られたいようですね……」

 青髪の少女はそう言って、床に転がる大学生風の男の死体を一瞥しながら、霧斗に冷たく笑いかけた。

「ス、スキニング・キャット? 猫鞭? い、一体、君は何なんだよ……ボ、ボクを殺すつもりなの……?」

 霧斗は聞き慣れない言葉に動揺しつつ、自らの死を覚悟するのだった。

 その時、タ、タ、タ、タ、と廊下を騒がしく駆け巡る音が聞こえてきた。

「はいはーい! その男の子を殺しちゃうのは、ちょーっとタンマ! アタシもその子に訊きたいことがあるのーっ! だから殺しちゃダメだってばあーっ!」

 ダンッと跳躍して男性用化粧室の出入り口から飛び込んで来たのは、セミロングの亜麻色の髪をした碧眼の少女だった。

   ゴシック・ロリータのドレスに身を包んだ十代後半くらいのその少女は男性用化粧室に飛び込むなり、いきなり自己紹介を始めた。

「ボンジュール! ジュ マペール ギロチーヌ! まあ日本流に言いますと、アタシの名前はギロチーヌですってとこかなーっ!」

「わあああっ! ギロチーヌちゃん! 助けてよーっ。この前、おっぱい触ったこと謝るからさあーっ」

 霧斗はギロチーヌの姿を見るなり、足を縺れさせながら這いずっていった。

「逃がしませんよ」

 スキニング・キャットと名乗る青髪の少女が、手にした鞭で霧斗の背中を打ちつける。

「ぎょえっ……」

 ビシッと激しく叩きつけた鞭が霧斗のシャツごと背中の皮膚を引き裂いた。

 霧斗が、うつ伏せに床に倒れ込む。

「ふんっ」

  青髪の少女の黒のエナメルの革靴が霧斗の背中をグリグリと踏みつける。

「うぎゃあああぁぁぁッ……」

 剥き出しとなった肉を革靴の踵で踏みにじられ、霧斗は壮絶な叫び声をあげた。

「うわぁ、なんだかとっても可哀想……」

 ギロチーヌが前屈みになり、霧斗の顔を覗き込む。

「ねえっ、アタシのこと、錆びて腐ったポンコツって言ったよね? それ、どういう意味っ? あ、それと、おっぱい触ったって、何? アタシがアンタにいつ、おっぱい触らせたのかなー?」

「はああっ? 錆びて腐ったポンコツなんてボク言ってないよっ? それはマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンのことを言っただけだし、おっぱいのことは、ごめん、ついこれから起きる未来の出来事を言っちゃった……って言うか、助けて! ねえ、ボクを助けてくれよおおおっ!」

 霧斗は泣き喚きながら、ギロチーヌに助けを乞うのだった。

「だから! アタシがそのマリーさんの首を刎ねた超本人なんだけど? 人のことポンコツ扱いしたうえに、おっぱいをこれから触るとか、アンタ何言ってくれてるのよ? バカじゃないの?」

 プイッと、ふてくされてギロチーヌはその場を立ち去ろうとしてしまう。

「わああっ、ごめんなさい。許してください。おっぱいは触りませんから。ねえ、行かないでくれってば……」

霧斗はギロチーヌを引き留めようと必死だった。

「さてはお前、例のギロチンか?」

   その時、青髪の少女が立ち去るギロチーヌの背に向け、鞭をしならせた。

「もう! 仕方ないわねー。ギロチン変化! メタモルフォーゼ!」

 足を止め、ギロチーヌが振り返ると、その重ねた両腕が瞬時に鋭い刃へと変形した。

「斬首執行(デカピタスィョン)! 無知なる鞭に裁きを下すわっ!」

 叫んだギロチーヌが重ねた両腕を襲い来る鞭に向ける。

   鋭いギロチンの刃と化したギロチーヌの腕が横方向にスライドする。

   スパッと歯切れの良い音を響かせ、しなった鞭がその根元から切り落とされる。

「やった! ギロチーヌちゃん!」

 うつ伏せの霧斗は思わずガッツ・ポーズをして喜んだ。

「くっ! 私の猫鞭がッ!」

 青髪の少女は悔しそうに唇を噛むと、

「いいでしょう。私もメタモルフォーゼとやらをお見せしましょう」

と冷たく微笑んでみせた。

「猫鞭変化(ヴァリヤスィョン・ドゥ・フエ・ドゥ・シャ)!」

 青髪の少女が叫ぶとともに、その身体が青白い光に包まれる。

 青白い光の中で、青髪の少女の身体が徐々に変化していく。

   人間の耳が消滅したかと思うと、ショートの髪の隙間からケモノのような尖った猫耳が生え出した。

   両腕は鋭い爪と肉球の付いたまるで猫のような掌に変わり、燕尾服の背中側のスリットの隙間からは尻尾のような物が生え出した。

   ただ、一点、目を惹くのはその尻尾が猫の尻尾のようでありながら、その先端が百本もの細いロープを束ねた鞭のような形になっていることだ。

   その一本一本の先端には固い結び目が付けられていた。

「これが私、スキニング・キャット様の正体なのです。にゃん」

 そう言って青髪の少女は両掌の肉球を見せながら、微笑んだ。

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可愛い描写に加えて、戦闘シーンが面白くて、興奮します!

愛機 縁

2018/3/9

2

愛機さん、コメントありがとうございます!!

お褒め頂き、純粋に嬉しいです♪可愛い描写と戦闘シーン、面白いとのお言葉、作者としては全体的に残酷にならないようにすこしユーモアのある雰囲気を心がけておりますので、そのお言葉、まさにありがたいです(^^♪

作者:湊あむーる

2018/3/9

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とじる

4.乳に塗れてリセットだ!!

「か、かわいいっ……」

 エナメルの革靴に背中を踏みつけられたまま、霧斗が顔を上げ、青髪の少女を見つめる。

 いまや猫耳姿へと変化した青髪の少女に霧斗の目は釘付けとなった。

「まあっ。アタシには、カワイイだなんて言ってくれないのにいっ!」

 ギロチーヌがプクゥと頬を膨らませ、その唇を尖らせる。

「にゃっ、にゃにを言うのです。この私が、かわいいなどと……」

 青髪の少女はその頬を赤らめ、恥ずかしそうに一瞬だけ口をつぐむと、

「い、いいでしょう。私の猫鞭の本当の威力を味あわせてあげましよう。にゃん」

 と言って尻尾をブウンと振り上げた。

「喰らえっ! スキニング・テイル! 剥ぎ取りの尾! にゃん」

 青髪の少女の尻尾がギロチーヌの胴体に炸裂する。

「きゃっ? きゃあああぁぁぁぁっ! アタシのゴスドレスがーっ!」

 尻尾の先端の無数の結び目が、ギロチーヌの胸のビスチェを引き剥がす。

  同時にブラジャーまでもが引き剥がされ、ギロチーヌの釣鐘型の豊満な乳房が露わにさらけ出される。

「いやぁん! どうしてアタシが、おっぱいを晒し出さなきゃいけないのよぉーっ!」

 慌てたギロチーヌがその腕ではだけた胸を隠そうとする。

「うぇぇーん! 腕がギロチンのままじゃ、おっぱいが切れちゃうーっ! 隠したくても隠せないじゃないのよぉ……」

 両腕が鋭いギロチンの刃と化しているため、その刃が少しでも胸に触れると、その白く美しい乳房からタラタラと赤い血が垂れ落ちてしまう。

「ギロチーヌちゃん。おっぱいそのままの方がいいと思うよ……」

 うつ伏せの霧斗はその頬を赤く染めながらもギロチーヌにそう言うと、

「だ、だけど、ボクの背中に猫耳ちゃんが乗っかったままで重たいんだ……ギ、ギロチーヌちゃん早く反撃してぇ……」

と苦しそうに呻くのだった。

「ふふふっ。猫鞭そのものである私の名前がどうしてスキニング・キャットと言うと思いますか? にゃん?」

 青髪の少女が、その猫のように目尻の吊り上がった瞳で、ギロチーヌの豊満な乳房を睨み付ける。

「……それはですね、鞭の先端の無数の結び目に『鉄の星』と呼ばれるトゲ玉が入っているんですよ。このトゲ玉が皮膚に当たれば、たちまち皮を丸ごと剥ぎ取って、その肉をぐしゃぐしゃに引き裂いてしまう。これがこの鞭がスキニング・キャット(皮を剥ぐ猫)と呼ばれる所以です。お前のその無駄な脂肪の詰まった乳房なんて、まさに格好の餌食だ! にゃん!」

 青髪の少女が叫ぶやいなや、その尻尾がギロチーヌの乳房を目がけて炸裂する。

「きゃあっ! アタシの、おっぱいは無駄な脂肪なんかじゃないもん!」

 ギロチーヌがその左腕の刃で青髪の少女の尻尾を受け止める。

「お返しよっ! えいっ!」

   ギロチーヌが瞬時に空いた右腕の刃で、青髪の少女の燕尾服を斬りつける。

「にぃやあぁぁーん!」

 燕尾服の胸元を下着ごとザクッと切り裂かれた青髪の少女は、いまやその乳房を露わにさらけ出してしまっていた。

 まるでお皿のような平べったい乳房に、ツンと尖った蕾のような乳首が乗っかっていた。

「ち、ちっぱいもかわいいっ……」

 うつ伏せの霧斗が顔を上げ、青髪の少女の乳房に見とれている。

「なによーっ! アタシの、おっぱいにはカワイイなんて一言も言わなかったじゃないっ!」

 ギロチーヌが、たわわに実ったその乳房をユサユサと揺らしながら、霧斗に怒鳴る。

「ふ、ふんっ。私は、べ、別に、胸にコンプレックスなんてありませんからねっ……にゃん」

 青髪の少女が真っ赤に頬を染め、ドギマギしながら、両手の肉球で自らの胸を覆い隠す。

「あるのね……」

「あるんだな……」

 ギロチーヌと霧斗がほぼ同時に呟やいた。

「「「キャアアアアアッ……」」」

   その時、廊下の向こうから大勢の人間の悲鳴が聞こえてきた。

「アイ……アン……メイ……デン……」

 ズシン、ズシン、という鈍い足音とともに、掠れたような低い女の声が続けて響き渡る。

「わあっ? あ、あの声はっ!」

 漏れ聞こえてきた女の掠れ声に霧斗はビクッと震えた。

「ふふふっ。アクシデントがあったおかげで予定よりも行動開始が遅れましたが、アイアン・メイデンが無差別殺戮をようやく始めたようですね。にゃん」

 青髪の少女は漏れ聞こえる大勢の人間の悲鳴に、嬉々として言う。

「へっ? アイアン? メイ? でーん?」

 ギロチーヌはポカンと口を開けたまま、その首を傾げ、ただ呆然とするのみであった。

「ギロチーヌちゃん! アイアン・メイデンだよ! 鉄の人形が人々を襲って、片っ端から串刺しにしちゃうんだ。は、早くなんとかしないと、博物館に来ている人たちが皆殺されちゃうよおっ!」

 霧斗が、うつ伏せのまま声を張り上げてギロチーヌに訴えかける。

「もおっ! アイアンだかメイデンだかなんだか分からないけど、お客さんたちがそんなに大騒ぎするなんて心外よ! 皆に、キャーキャー騒がれるのは、マリー・アントワネットの首を刎ねた、このアタシのはずなのにぃっ! 悔しいーっ!」

 ギロチーヌは慌てて男性用化粧室の出入り口から廊下へと出ようとした。

「行かせるものですかっ! にゃん」

 青髪の少女がすかさず尻尾の猫鞭でギロチーヌの背中を叩きつける。

「あぁーんっ」

   ビシッと激しく肉を叩きつける音とともに、ギロチーヌはその背中を仰け反らせた。

   瞬時にギロチーヌの背中の皮膚が剥ぎ取られ、その肉が露わに晒し出される。

   ギロチーヌはそのまま前のめりに化粧室の床に倒れ込んだ。

「ギロチーヌちゃあああぁぁぁんっ!」

 背中を踏む革靴を撥ね退け、ガバッと勢いよく起き上った霧斗は、倒れたギロチーヌの元へ駆け寄った。

「大丈夫かい、しっかりするんだギロチーヌちゃんっ!」

 霧斗がギロチーヌの身を必死に揺さぶり起こそうとする。

「う……うーん……」

 倒れるギロチーヌの額には脂汗が垂れ、その息は弱かった。

「ははははっ! 我々、ラ・トルテュール一族の邪魔をする者たちは、このスキニング・キャット様が容赦なく排除する! その相手が、かの悲劇の王妃の首を刎ねたギロチンであろうともね。にゃん!」

 青髪の少女が瀕死のギロチーヌを見て、不敵な笑い声をあげる。

「ラ・トルテュール一族だって……?」

 霧斗が青髪の少女の言葉に訊き返したその時、廊下からふたたび大勢の者たちの叫び声が響き渡ってきた。

「メイ……デン……強制執行……」

 ギギギッ……ガガガガガッ……。

 鉄の軋む音が廊下から漏れ聞こえ、バタンと鉄の扉の閉じられる音が聞こえる。

 グサッ、グサッ、ブスリッ、ブスリッ、グサリッ、ブスリッ、と肉を突き破る音が連続して聞こえてくる。

「執行……完了……」

 アイアン・メイデンの掠れた声が聞こえると、

「うわあああぁぁぁぁッ! 閉じ込められた奴が血塗れだぞーッ」

「きゃあああぁぁぁぁッ! つ、次は私たちを襲う気よっ……」

 と、残された者たちの恐怖に慄く悲鳴が飛び交ってくる。

「くそぉ……こうなったら、一か八か、もう一度リセットだ……」

 霧斗は冷や汗をその額から垂らしながら、横たわるギロチーヌの姿を見た。

「ギロチーヌちゃん、ごめん!」

 霧斗がその手をギロチーヌの胸元へと伸ばす。

 むにゅうむにゅうと、ギロチーヌの豊満な乳房が霧斗の掌によって揉みしだかれる。

「なっ……? 私への当てつけ? にゃん?」

 青髪の少女が口をポカンと開け、自らのお皿のような乳房にその視線を落とす。

「はあぁっ? アタシが重傷を負って抵抗できないからって、おっぱいをここぞとばかりに揉むなんて、どーいうことよおっ?」

 カッと瞼を見開き、息も絶え絶えだったはずのギロチーヌが、真っ赤になって怒り狂う。

「いやぁん! えっちいいいっ!」

 ギロチーヌの腕が霧斗の頭を目がけ振り下ろされた。

「ぎええええーっ!」

 スパァン。気持ちのいいくらいの肉を切り裂く音とともに、霧斗の首が宙を舞う。

 ひゅるひゅるひゅるっ、と回転しながら霧斗の首が化粧室の床へ落下する。

「いけない。またやっちゃった……」

 ギロチーヌは床を転がる霧斗の首を見て、その瞳に後悔の色を滲ませるのだった。

「ボク、死んだ……?」

 霧斗がハッと気が付くと、そこは照明の灯った明るい空間だった。

「く、首は繋がっているみたいだな……?」

 まず確認することは、自分の頭と胴体とがきちんと繋がっているかどうかだ。

 霧斗が自身の身体に目を向けてみても、胴体だけでなく、腕も足もすべてがきちんと存在していた。

「そうだ……パソコン!」

 霧斗は自室の机の上に置かれたデスクトップ型のパソコンの画面に目をやった。

「やっぱり……拷問博物展の宣伝ページが表示されてる!」

 ディスプレイには、マリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンの公開を宣伝する謳い文句が表示されていた。

「き、今日の日付は……?」

 唾をゴクリと飲み込みながら、画面右下の日付表示を確認する。

「やっぱり! 十月十四日の土曜日だ!」

 目を凝らして何度見ても、ディスプレイの画面右下の日付表示は、十月十四日の土曜日になっていた。

 すなわち今日が、霧斗が拷問博物展に足を運び、あの眼鏡の大学生風の男が死ぬ、その前日であるということを示している。

「ははは! やっぱりボクが思った通りだ!」

 霧斗は思わずガッツ・ポーズをする。握った拳に力が入る。

「ようするにだ! ボクはギロチーヌちゃんという女の子に首を刎ねられても、生き返ることができる。そして死ぬ前の日の夜に時間が巻き戻る。この二つの点が実験できたってことだ!」

 自らの命を賭けた壮絶な実験は功を奏した。

 もし自分の読み通りにいかなければ、霧斗はギロチーヌに首を刎ねられたまま命を落としていた。

 でも、今はこうして、ちゃんと生きている。

 一か八かの命懸けの実験をした甲斐があったというものだ。

「あの状況じゃ、これに賭けてみるしかなかったんだ……」

 拷問博物展の男性用化粧室で、眼鏡の大学生風の男に死なれたうえに、スキニング・キャットと言う青髪の少女にギロチーヌまでもが襲われ瀕死の状態に。

 さらにはアイアン・メイデンまでもが動き出し、拷問博物展に訪れた見物客たちが無差別に殺されていった。

 そんな状況で霧斗一人がスキニング・キャットとアイアン・メイデンという二つの敵に立ち向かっていったところで事態を打開できたとは考えにくい。

 ならば、自分が死んで、時間を巻き戻し、状況を一旦リセットしてまでも一から態勢を立て直したほうが得策だ。

「でも、一回目の時よりも状況は悪くなっているじゃないか……」

 霧斗が一回目に拷問博物展を訪れた時は、大学生風の男だけが死んだ。

 それもアイアン・メイデンの暴走をギロチーヌが止めたおかげで、他に犠牲者は出なかった。

 だから、霧斗が最初に死んで時間が巻き戻り、二回目に拷問博物展を訪れた際には、とにかく大学生風の男の死だけをなんとか防ごうとやっきになっていたつもりだ。

 しかし、二回目の拷問博物展での結末は大学生風の男の死を防げなかっただけではない。

 アイアン・メイデンの暴走さえも止めることができず、より多くの犠牲者を出してしまったのだ。

 そしてさらには一回目には無傷だったギロチーヌを二回目では無残にも瀕死の状態にまで追いやってしまった。

「三回目こそは、もう誰も傷つけたくない! もう誰も死なせない!」

 霧斗はそう強く心に誓った。

「でも、そのためにはどうしたらいいんだ? ボクにいったい何ができる?」

 決意するや否や霧斗の自問自答が始まる。

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ものすごく描写に意外性があり、特に「男性用化粧室」と書かれたところが丁寧で返って面白い。勉強になります。
キャラのネーミングはピカイチです。
この回好きです。

2

あふりかのそらさま、コメントをありがとうございます!!男性用化粧室、そうですね、このとき執筆時の自分はなぜかそう書いてしまっていますね(^^♪今思えば、ほかに言い方があったかも笑……でも却って面白かったならよしとしよう(^^♪えへへ!!

作者:湊あむーる

2018/8/18

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とじる

5.作戦決行のサタデーナイト

「ボクが素手でアイアン・メイデンや猫鞭の女の子と戦っても勝てる見込みはないしなあ……」

 根本的な問題だった。何度、死んで時間が巻き戻ったところで、相手にする敵が鋼鉄の殺人人形や、皮剥ぎの鞭の使い手ならば、丸腰の自分には勝てる確率は少ない。

   いや、皆無と言って良いだろう。

「やっぱり頼みの綱はギロチーヌちゃんしかいないよなあ……」

 霧斗は、両腕がギロチンの刃に変形する、あの亜麻色の髪の少女の姿を思い浮かべた。

「……っていうか、ギロチーヌちゃんって何者なんだ?」

 今になって急に疑問が湧き起こってきた。

   アイアン・メイデンやスキニング・キャットが拷問道具なら、ギロチーヌの変形した両腕もまさに鋭いギロチンの刃そのものだ。

「もしかして、ギロチーヌちゃんもその正体が、実はギロチンそのものだったりして……?」

 いくら鈍感な霧斗と言えど、そのことに気が付かない訳ではない。

   思い当たることがあると言えば、いくつかあった。

「一回目も二回目もボクがマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンを、錆びて腐ったポンコツと言ったら、ギロチーヌちゃんが怒っていた。ボクがあのギロチンにそんなことを言ったなんて、知っているはずないのに……」

 そう考えながら、霧斗の目の前に、あの亜麻色の髪の少女がその碧い瞳に怒りの色を滲ませている光景が映し出されるかのように思い出される。

『だから! アタシがそのマリーさんの首を刎ねた張本人なんだけど?』

 たった今、この瞬間にギロチーヌに怒られているかのような錯覚に苛まれながらも、霧斗は心のなかで確信していった。

「間違いない! ギロチーヌちゃんこそが、あのマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンそのものなんだ!」

 そう確信すると同時に、今度は霧斗の目の前に、猫耳を生やしたあの青髪の少女の姿が思い浮かばれた。

『ははははっ! 我々、ラ・トルテュール一族の邪魔をする者たちは、このスキニング・キャット様が容赦なく排除する! その相手が、かの悲劇の王妃の首を刎ねたギロチンであろうともね。にゃん!』

 霧斗の目の前で、今まさにスキニング・キャットと名乗るあの青髪の少女が、勝ち誇った高笑いをしているかのような錯覚に陥る。

「ラ・トルテュール一族って、いったい何なんだっ……?」

 霧斗は青髪の少女の言葉を思い出しながら、何か得体の知れない、大きな組織の存在の気配と、陰謀の匂いとを感じ取るのだった。

「こうしちゃいられないっ!」

 霧斗は突然、思い立ったように立ちあがると、自室のドアを開け、階段を駆け下りた。

「霧斗、こんな夜遅くにどこ行くのっ?」

「うん、ちょっとね。生きてても死んでても、たぶんすぐ帰って来るから!」

 背中越しに母親の声を聞きつつ、霧斗は玄関のドアを開け夜の街へと飛び出した。

「ハァ……ハァ……」

 息を切らしながら夜の住宅街を最寄りの駅へと駆け抜ける。

 真っ直ぐに走る霧斗の脳裏に一つのアイデアが思い浮かんでいた。

「あの眼鏡の大学生の男の人も、拷問博物展に来た他のお客さんたちも誰一人傷つかずに済む方法……それは、この方法しかないっ!」

 真剣に考え抜いて思いついた発想だが、いざそれを言葉に出して言おうとすると、荒唐無稽なバカバカしさを感じずにはいられない作戦だ。

「その方法とは……」

 躊躇いながらも霧斗は、自分の心に言い聞かせるために敢えて言葉に出そうと試みる。

「……ギロチーヌちゃん誘拐作戦だ!」

 口に出してみて、その不謹慎で反社会的な言葉の響きに我ながら辟易する。

「もし、ギロチーヌちゃんが本当にあのマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンだとしよう。あれだけ大勢の見物客が行列を作って観に行くほどのギロチンだ。そのギロチンが公開初日の前日に盗まれてみろよ。途端に大騒ぎだ! 明日のギロチン公開はもちろん中止。マリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンを見ることができないと知った見物客たちは当然、拷問博物展に行くのを止める。ヘタをすれば博物展そのものが中止になるかもだ!」

 そこまで考えて、霧斗は自身の発想に興奮し、身震いをするのだった。

「えへへっ! ボクって天才だねっ! これで誰一人傷つかないで済むぞ! 博物展が中止になればアイアン・メイデンだろうが、スキニング・キャットだろうが、傷つける相手がいなくて手持ち無沙汰さ! はっははーっ! 誘拐最高だっ!」

 そう言い終えて、霧斗はハッと我に返った。気が付いたら、電車の中だった。

「誘拐最高だって……?」

「拷問とか誘拐とかー、もしかしてーあの子、サイコパスとかいうヤツじゃん……?」

 車内のサラリーマンや女子高生などが霧斗に冷ややかな視線を送っていた。

「いいんだ……大事件を未然に防ぐ天才は、人々から理解されないものさ……」

 霧斗は、バツの悪さに下を向き、恥ずかしさにその頬を赤らめるのだった。

「こ、こんな夜遅くじゃ、当然閉まっているよなあ……」

 御茶ノ水の駅を降りた霧斗は、拷問博物展のある某大学キャンパスに向かいながら、溜め息を付いていた。

 まだ電車が動いている時間とはいえ、夜もかなり遅い。

「よ、よく考えたら、夜の博物展に侵入する方法を考えるのを忘れてたっ……」

 天才、天才、と興奮して舞い上がっていたことの落とし穴だった。

「絶対、シャッターとか閉まってて、部外者が入り口を壊してでも入ろうとすれば、非常ベルが鳴り響いて、警棒を持ったガードマンが飛んで来るに違いないっ……」

 今思えば、至極当然のことだ。

 そんなごく当たり前のことさえも気が付かない自分は、天才どころか凡人以下、いや、凡人未満なのかもしれない。

 霧斗は半ば諦めに近い心境で、拷問博物展の入り口にまで辿り着いた。

 すると、博物展の入り口前の道路には大型のトラックが停められ、作業員らしき数人の男たちが何やら得体の知れない大きな物体を運びこもうとしている光景に出くわした。

「オイ、慎重に運べよ! これを傷つけでもしたら、明日からの展示が台無しだからな!」

 責任者らしき男が大きな声で怒鳴り散らしている。

 高さ四、五メートルほどありそうな、布で覆われた巨大な物体が台車に載せられ、数人がかりで運ばれている。

「もしかして……?」

 霧斗の直感が告げる。

 まさに今、運ばれようとしている物体が自分の求めているソレであると。

「公開前日の夜に運ぶなんて、そんなギリギリなことってあるのか……?」

 躊躇っている暇など無い。

 運ばれている物体が建物の中に納められてしまうその前に、なんとか接触しなければならない。

 霧斗は運ばれている物体へとすかさず駆け寄っていった。

「オイ、何だ坊主? 大事な荷物を運んでるんだ! シッ、シッ、あっちへ行け!」

 責任者らしき男が、走り寄る霧斗に声を荒げ、手で追い払う仕草をして、咎めるように怒鳴る。

「へえー、これが、あのマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンなの? こんな錆びて腐ったポンコツが?」

 霧斗は、わざと嫌味ったらしい口調で、布で覆われた巨大な物体を指差して責任者らしき男に笑いかけた。

「オイ、坊主。どうしてコイツの中身を知ってるんだ?」

 責任者らしき男が布で覆われた物体を顎でしゃくる。

「……って、何だあっ、オイ? 一体どうしちまったってんだコイツよお?」

 顎を向けた責任者らしき男が驚愕の叫び声をあげる。

「ひゃあああっ……分かりません。お、親方、逃げましょう……」

 作業員たちが腰を抜かして慌てている。

 運ばれている物体を覆う布の中から、目もくらむ程に眩しい金色の光が輝き出していた。

 すると突然、物体を覆う布がパサリと剥がれ落ち、その中から一人の少女が姿を現した。

「ボンソワール! ジュ マペール ギロチーヌ! まあ日本で言うところの自己紹介ね。アタシ、ギロチーヌよ。ギロちゃんって呼んで?」

 亜麻色の髪の碧眼の少女。

 ゴシック・ロリータのドレスを身に纏い、その手にクリーム色のフリルの付いた黒いパゴダの日傘を差していた。

「やっぱりだ! ボクの読みが当たったぞ! ギロチーヌちゃんの正体は、あのマリー・アントワネットの首を刎ねたギロチンだったんだ……」

 霧斗は亜麻色の髪の少女の出現に、思わずガッツ・ポーズをして喜んだ。

「オイ! ギ、ギロチンはどこいった? あのマリー・何とかネットの首を刎ねたギロチンをよ、オイラたちは今夜中に運ばねえとならねえんだ!」

 責任者らしき男が、台車の脇の地面に落ちた布をめくり上げる。

 台車の上からも、地面に落ちた布の下からも、歴史を刻んだ斬首台は影も形も無く消え失せていた。

「もう! マリーさんの首を刎ねたギロチンなら、ちゃんとここに居るじゃないのよ! そんなことより、誰よ? アタシのこと、錆びて腐ったポンコツって言ったのは! アタシ、すっごい怒っているんだからね!」

 ギロチーヌは碧眼の瞳を吊り上げて、怒り心頭といった様子だった。

「こ、このオジサンです……」

 霧斗が躊躇うことなく、責任者らしき男を指差す。

「まあ! こんなオジサンに言われたくないわ! アンタこそ錆びて腐りかけたような顔してるじゃないのよーっ! ギロチン変化! メタモルフォーゼ!」

 ギロチーヌの重ねた両腕が瞬時に鋭い刃へと変化する。

「オイ、お、お嬢ちゃん。何だってそんなノコギリみてえな腕してやがるんだ……?」

 責任者らしき男は額に冷や汗をダラダラと垂らしながら、冷たく光るギロチンの刃と化したギロチーヌの腕を見つめた。

「うっるさぁいっ! 二度とポンコツなんて言えないように、その首、斬り落としてあげる! 斬首執行(デカピタスィョン)! ディスるオヤジは大嫌いっ!」

 ギロチーヌが顔を真っ赤にして怒鳴りながら、重ねた両腕を頭の上に高く振りかざす。

「ひっ、ひぃやあああーっ! オイラの首と胴体が切り離されちゃあ、たまったモンじゃねえっぺよぉーっ!」

 責任者らしき男は、股の間から黄色い液体を勢いよく漏らしながら、一目散に逃げ出していった。

「親方あーっ! オレたちを置いて行かないでくださいよーっ!」

 作業員たちもその後を追いかけるようにして逃げ出した。

「待ちなさいよぉーっ! このクソオヤジいいいいっ!」

 ギロチーヌはギロチンの刃を頭上に掲げたまま、男たちを追いかけ回すのだった。

「ギロチーヌちゃんって、けっこう怒りの沸点が低いよなあ……」

 霧斗は半ば呆れ気味に溜め息を漏らし、亜麻色の髪の少女の背中を追いかけた。

「ふん。例のギロチンが変化をするとは意外でしたね……」

 運搬用のトラックと台車が放置されたまま、人影の無くなった博物館の入り口で、燕尾服に身を包んだ青髪の少女は、冷たい微笑を浮かべたのだった。

修正履歴

  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/01/19)
  • 内容に影響のない範囲で、一部表現の変更や追記をおこないました。(2018/01/19)
  • 誤字、脱字の修正をおこないました。(2017/12/15)

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2

いえいえ!!ご感想をいただけて嬉しいです(^^♪実はあまり感想が書かれない作品のようで、反応が分かって参考になります♪豆腐メンタルなので、好意的なご感想嬉しいです!

作者:湊あむーる

2018/2/8

3

Twitter企画できました。
エッチなのは好きです。乳首と乳房の形に並々ならぬこだわりがあるようで何よりです。
キャラクターに不快感が無いのでスイスイ読めていけますね。読みづらさが無く、テンポが良いのは見習いたいです。
これからも頑張ってください😃

相模原帆柄

2018/3/17

4

 相模原帆柄さま
コメントありがとうございます。
えっちな感じというのを好意的に受け止めていただけてよかったです(^^♪
不快感のないキャラですか!!そう言っていただけ光栄です!!!!

作者:湊あむーる

2018/3/17

5

言葉の表現に棘がなく、伝え方が上手だなぁって思います。
普通なら直球勝負で書いてしまう言葉もうまく、面白さに変換しているところに斬新さを感じ
うなずくばかりです。

6

あふりかのそらさま、コメントをありがとうございます!!!言葉は良い意味でまわりくどいのが好きな場合もありまして、執筆時にその時のノリで思い浮かんだ表現を大事にしていますヽ(^o^)丿後で書き換えたり、手を加えてしまうよりも、その時の自分の感性を大事に、信じるようにしています。お褒め頂き、ありがとうございます!!

作者:湊あむーる

2018/8/17

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