8

五秒後の貴方へ 完結

ポイント
527
オススメ度
121
感情ボタン
  • 16
  • 5
  • 0
  • 0
  • 7

合計:28

時を五秒だけ巻き戻せる。
そんな不思議な能力を持った高校生大野正樹は、思い人である同級生の相原優子に告白しようとしていた……。

投稿された表紙はありません

この物語の表紙を投稿する

すべてのコメントを非表示

「好きだ! 付き合ってくれ相原!」

「あっ、え、えっとね……!」

「ダメだぁ! やり直し!!」

 時間を、五秒戻す。

 異能、超能力、特殊能力――etc

 世には常識では考えられない不思議な能力を持つ人間がいる、なんていう噂がまことしやかに語られているが……。

 何を隠そうこの俺がその噂が現実であることの体現なのだ。

 五秒だけ時を戻す。

 たったの、五秒。それ以上でも、それ以下でも無い。

 なんで俺がこんな能力を持つかも不明。正しい使い方も分からない。

 じゃんけんやババ抜き程度の使い道しかないだろうこの能力であったが、俺がこの世にオギャーと生を受けてから今日まで、これ程までに有効活用されたことはないだろう。

「……? 大野くん。どうしたの?」

「いや、なんでもないよ相原。それより数学の宿題って何ページだっけ? ど忘れしちゃってさー」

「え、えー、もうっ! ちゃんと授業聞いておかないとダメじゃない……。えっと、何ページだっけ? えっと、あれ? その、ちょ、ちょっと待ってね!」

 危なかった。ギリギリ成功したようだ。

 俺の目の前であたふたと自らのカバンを漁るのは同じ高校二年生でクラスメイトの相原優子。

 そして今まさに彼女に告白し、見事玉砕の予感を察して時を戻したのが、大野正樹という名のヘタレ、つまり俺だ。

 相原との付き合いは高校に入ってからだ。神様のいたずらか、はたまた運命の導きか。 所謂一目惚れからの少しずつ距離を詰め、ようやく放課後一緒に雑談出来る程度の仲にまで進展したのだが、ようやくいざ告白と言ったところでこの体たらく。

 慌てて五秒時間を戻したが、あの雰囲気からすると断られる流れだろう。

「相原さー」

「ん? なぁに、大野くん。今ノート見るから待っててね――」

「一目見たときから好きだった! 結婚を前提に付き合ってくれ!」

「えっ! ええっ!! け、結婚!?」

「時よ戻れぇぇぇぇ!!」

 ダメだな。結婚はダメだ。

 もしかしたら勢いでいけるかも? と思ったが、まぁダメだった。

 流石にお年頃の女の子に結婚を申し込むのは些か気が早い。

 そもそも普通に告白したところでOKを貰えない雰囲気なのだ。もう少し長く時間を戻せたら彼女の言葉を最後まで聞くことができるのだろうが、残念ながら俺には五秒だけしか時を戻すことができない。

「分かったよ大野くん。 54ページだって」

「おっ、サンキュー」

「……んっと、どう? 用事はおわり、かな?」

「そだな。帰るかー」

 とりあえず今日はこれで終わりにしよう。これ以上の告白は俺のMPが持たない。

 時間を巻き戻す力が足りないとか、回数制限があるとか、そういう話ではなく単純に俺のメンタルが限界に来ている。

 だがどうだろう? 隣で一緒に歩く相原の様子をそっと窺う。

 夕日に照らされた彼女の顔は頬が染まっているようにも見え、その魅力を高めている。

 いけそうな気もするんだけどなぁ。客観的に見ても、俺に気が無いわけでもないと思うんだけどなぁ~。

「夕日に照らされた顔も可愛いぞ相原。好きだ、付き合ってくれ」

「わっ! え! い、いきなり――あ」

「戻れぇ!!」

 危ない! 実に危なかった!

 覚悟も無いのに気軽に告白してしまった! なんて迂闊な俺だ! いや、俺にそんな迂闊な行動を取らせる相原が悪いのだろう。俺は悪くない。いや、相原を好きすぎる俺が悪いのか?

 まぁいい。今日はこれで店じまいだ。

 もちろん、俺はまだ諦めた訳では無い。こうやって相原が一緒に帰ってくれるってことは、少なからず好意のようなものを持ってくれているという事だろう。

 つまりはもう少し好感度を上げればイケる!

 そうなればやるべき事は決まった。

 このまま彼女の好感度を稼ぎながら、定期的に告白していけばいいのだ。

 なぁに、俺の時戻しは何度でも使える。都度様子を見つつ、彼女の好感度がどれほどあるか、じっくり見極めるとしよう…………。

◇   ◇   ◇

「相原ぁ! 今日も好きだぞ付き合ってくれ!」

「えっ! ど、どうしたの大野く――」

「相原って笑うと最高に可愛いよな付き合おう」

「か、かかかか可愛い!? そ、そんな――」

「なんで他の男子は相原の良さが分からないんだ? なぁ相原? とりあえず付き合ってくれ」

「ひゃっ! い、いま授業中だよ!」

「はぁ……相原好き。好きすぎてヤバみ」

「えっ!? い、いまなんて?」

「あっ! やっべ声に出てた!」

 ◇   ◇   ◇

 そんなこんなで二ヶ月が経った。

 もうなんど彼女への愛を叫んだことだろうか? ぶっちゃけ叫びすぎて回数を数えるのも馬鹿らしくなってきている。多分三桁超えているだろう。

 ともあれ、沢山告白したところで俺が多少満足する程度で相原との関係性に何か変化が起るという訳でもなかった。

 そして彼女の俺に対する好感度も、依然として不明だった。

「あの、ちょっと相談したいことがあるんだけど、放課後時間空いてるかな大野くん?」

「大好きな相原の為だったらいくらでも時間を空けるぜ!」

「だ、大好きって……そんな――――放課後、時間空いてるかな大野くん?」

「ああいいよ、放課後だな、空けておくよ」

 最近ではナチュラルに愛の告白をする始末だ。

 いや、なんか俺への好感度を確認するというか、愛を叫ぶ為に告白してるみたいな感じで本末転倒だ。

 とはいえまだまだ相原の好感度獲得作戦に関しては予断を許さない。

 一世一代の告白なんだ。ちゃんとOK貰わないと以後気まずくなって二度と彼女と付き合うことは出来なくなってしまうだろう。

 それどころか今までのように話をする事も出来なくなってしまうかもしれない。

 そんな人生考えられない。故に最大限の注意を払ってことを進める。

 俺は慎重派なのだ。

 ……っと、放課後だったか。

 もちろん忘れていないよハニー。

 あっ、ハニーって呼び方もいいかな。次に会ったとき言ってみよう。

 ………

 ……

 …

 そうして放課後がやってくる。

 他のクラスメイトは全員帰ってしまったようで、教室に残るは俺と相原だけだ。

 挨拶代わりの告白をしたあと、彼女の相談とやらを聞く。

 ふふふ。相談までされる仲とは、これは確実に進展している!

「あ、あのね――」

「どうしたの? なんかやけに真剣そうだけど……」

 ん? そんなに重要な問題なのだろうか?

 些か心配になってきた。万が一恋愛の相談だったらどうしようかという不安だ。

 仲良くなりすぎて友人としてしか見られなくなった、とか、好きな人が出来たから男性の意見を聞きたい、とか、そういう類いの相談だったらすぐにでも窓から飛び降りる自信がある。

 だが幸いなことに彼女の悩みは少し違ったようで……。

「超能力って信じる?」

 それは俺にも少々縁のある話題だった。

「ああ、世界では結構な人数が確認されてるって話だっけ。ああいうのがある人は羨ましいよな~。もしかして相原も超能力あるの?」

 おお! もしかして相原も超能力持ちか!?

 ならそこをきっかけに仲を深めることができるじゃないか!

 超能力を持ち悩む少女。その悩みに寄り添い理解する男。

 やがて二人の想いは深まり、恋に落ちる!

 くぅ! これこそラブロマンスだ!

 チャンスが回ってきたぞ!

 で、どんな能力なんだいハニー。もちろん、俺は君の全部を受け止めるよ。

「私ね――五秒後の未来が、視えるの」

「…………え゛っ」

 五秒ってどういうこと?

 あれ? ちょっと分からない。えっと、俺が五秒時を戻せるから、彼女が五秒先の未来が視える能力ってことは……もしかして?

「その! 五秒後に相手がどういう事をするかとか! 何を言うかとか! 全部視えちゃうの!」

 ……ダウト。

 やべぇ。俺やべぇ……もしかしてぜぇんぶ覚えてるってこと? え? あれ全部?

 顔を真っ赤にし、胸の前で手をぎゅうっと握りながらそう叫んだ相原。

 どう考えても、全部聞かれてる。終わった。俺の人生、終わったわ。

「ま、まじですか。あ、あの、どうしてモット、早く、言ってくれなかったンデスカネ……」

「ず、ずっと言い終わってくれるの待ってたのに。大野くんったらすぐ時間戻しちゃうんだもん!」

 そりゃあ五秒しかないからな! ヘタレだから実際は三秒くらいで戻してたけど!

 ってあれ? ずっと待っていた? 断るんだったらすぐに断れるし……。

「だって相原が断りそうな雰囲気だったから、って、え? 待ってたって、それってもしかして……」

「最初からOKだったよ! 全部全部、今までの! ぜ~んぶOKです!!」

 唖然とする。

 まさか、最初からOKだっただなんて。

 俺は何という遠回りをしていたのだろうか……。

 しかもその結果とんでもないことをしでかしていたとは。

 だが不幸中の幸いというか、結果オーライと言うべきか。OKを貰ったんだ。あの相原から! 俺の人生の女神である相原から! 告白のOK貰った!

 け、けど……。

「は、恥ずかしすぎて死ぬ……」

「わ、私だって恥ずかしいよ……毎回あんな告白聞かされる方の身にもなってよぅ」

 鏡がないから分からないが、まぁお互い顔は真っ赤っかだろう。

 今まで告白してきた言葉の数々が脳内でリフレインされる。

 俺ときたら、彼女がどうせ忘れると思ってなんて情熱的な言葉を言い続けてきたんでしょう。

 ハリウッド映画でも滅多に聞けない台詞ばっかりだったぞ。

「あの、よろしくね大野くん」

「うん。よろしく相原……それと、以後気をつけます。恥ずかしいこと言いません……」

「そ、そこは……気をつけなくてもいいよ」

 その言葉に思わず、え? と言葉を漏らして彼女の顔を見る。

 恥ずかしそうに顔を朱に染めはにかむ彼女は、

 何よりも美しく輝いていた。

  • 16拍手
  • 5笑い
  • 0
  • 0怖い
  • 7惚れた

1

や、やばい。いろいろとやばいー。なんだか恥ずかしいけど嬉しい。

umi

2017/10/30

2

いやー、これは面白い設定だ

3

キュンキュンしました。
オチもしっかりハッピーエンドでよかったです。

神凪紗南

2017/11/8

4

5秒というのがいいですね。

sacman

2017/11/20

5

主人公とヒロインの能力が反対なのが良かったです。
片や過去、片や未来に関する異能。
主人公の勘違いでハッピーエンドを遠ざけているのも、ふふっと笑ってしまいました。
これからも、面白い作品を楽しみにしております。

阿武隈 嵩

2017/12/30

コメントを書く

とじる

オススメポイント 121

つづけて SNS でシェアしてオススメシポイントをゲットしましょう。

とじる

このページの内容について報告する

送信中

送信しました

文字数の上限を超えています。